遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)では、「遺伝子組換え生物等」を定義しています。そこでは、以下のように、ヒトや動植物の培養細胞は、「生物」とは定義していません。定義は、我々の感覚ではなく、あくまで現実に即して決められています。よく練られた定義だと思います。
「文部科学省ライフサイエンスの広場」に同法の詳しい説明があり、『この法律において「生物」とは、一の細胞(細胞群を構成しているものを除く。)又は細胞群であって核酸を移転し又は複製する能力を有するものとして主務省令で定めるもの、ウイルス及びウイロイドをいう。』と書かれています。
また、省令・告示によると、以下の2つを除く、とされています。(1)ヒトの細胞等、(2)分化する能力を有する、又は分化した細胞等(個体及び配偶子を除く。)であって、自然条件において個体に成育しないもの
上記の例として、ヒトの個体・配偶子・胚・培養細胞、動植物培養細胞(ES細胞を含む)、動物の組織・臓器、切りキャベツ、種無し果実など、これらは、すべて生物でないとされています。
さらに、「遺伝子組換えに関するQ&A」が用意されていて、そこでは、「問1-4 ヒトの細胞は法の対象となるのでしょうか?」や「問1-7 組換え核酸を導入した植物細胞のプロトプラストのような培養細胞は法の対象となるのでしょうか?」等の質問と答えが書かれていて、ヒトの細胞は、遺伝子治療などの治療行為を制限しないために対象外とすること、ウイルスを用いたりしなければ、遺伝子組換え培養細胞は対象外であることが明記されています。
ところが、私のいる大学では、「遺伝子組換え実験実施規則等」があり、ヒトの細胞も培養細胞も、遺伝子組換えしたものは、すべて「遺伝子組換え生物等」と定義しています。
これでは、法律と学内規則を同時に守ることができない可能性があります。例えば、用いる培養細胞によっては、法的には動物作成実験であるはずのものが、この大学では動物接種実験になってしまいます。また、ヒトの遺伝子治療は、法的には規制されないのに、大学の規則で規制されます。また、ここではふれませんが、この規則にはカルタヘナ法施行と同時に廃止されたはずの「組換えDNA実験指針」の内容がたくさん残っています。
遺伝子組換えに詳しい某先生が言っておられましたが、「このような学内規則って違法」かな?
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