「GABAのサプリは認知症に効く」はウソ!

「GABAのサプリは認知症に効く」は本当?
以下は、記事の抜粋です。


ストレス軽減や血圧低下に効果があるというアミノ酸のGABA。「脳にも良さそうなので認知症にも効く」と考え、GABAを多く含んだ健康食品やサプリメントを摂取している人がいるようです。本当はどうなのでしょうか。工藤千秋・くどうちあき脳神経外科クリニック院長にGABAの働きや効果について聞きました。

GABAは「γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)」の頭文字を取った略称です。ヒトの体内では、アミノ酸の一種であるグルタミン酸から作られ、脳や脊髄に存在します。神経細胞の間で情報を伝える神経伝達物質でもあり、情報を受け取った神経細胞の興奮を抑制する働きがあることが分かっています。このためGABAの作用を強めることで、鎮静、不眠や不安の改善、麻酔の効果を目的とした医薬品もあります。

現在、血圧低下やストレス低減の効果の期待をうたってGABAのサプリメントや健康食品が市販されています。この作用は、体内で神経伝達物質あるいはホルモンとして働くノルアドレナリンの分泌量がGABAの作用によって低下することで起こると考えられています。

ホルモンのノルアドレナリンは血管を収縮する作用があります。ですから、分泌量が減ると血管が拡張して血圧が下がるのです。また、ノルアドレナリンは興奮性のホルモンと言われます。分泌量が低下すると、興奮しにくくなって、イライラした気分になりにくくなると考えられています。そのため、ストレス軽減につながるというわけです。

ストレス軽減効果と聞くと、摂取したGABAが直接脳に作用しているかのように思われがちです。しかし、交感神経で起きていることが間接的に脳に伝わるという仕組みなのです。

さて、「GABAは脳に良い作用があるというので、認知症や老化の物忘れにも効くはず。だから、GABAのサプリメントを飲んでいる」とおっしゃる方がいます。ところがこれは全くの誤解です。サプリメントで摂取したGABAは脳に直接は作用しません。脳の毛細血管に存在する血液脳関門をGABAは通過できないからです。

GABAの摂取に関する大きな誤解がもう一つあります。動物実験の結果から、アルツハイマー型認知症で記憶障害が発生している場合、GABAを増やすのではなく、GABAの作用を抑制することで記憶障害が改善するという研究報告があります。このようにGABAを摂取しても脳に到達せず、脳内のGABAを増やしてもアルツハイマー型認知症の改善にはつながりません。


上の記事では、GABAのストレス軽減や血圧低下という効果が広く認められているように書かれていますが、これも誤解です。特に、医薬品ではなく食品扱いのサプリのGABAに本当に効果があるという科学的根拠はほとんどありません(記事をみる)。

また、工藤氏はGABAのこれらの作用がノルアドレナリンの分泌抑制によると書かれていますが、これの科学的根拠も希薄です。実際、北海道大学のグループの行ったGABAを多く含むコメが血圧を下げるかを調べた研究では、血圧をわずかに下げたにもかかわらず、ノルアドレナリンの分泌には変化が認められませんでした(論文をみる)。

このように、GABAを含んだというサプリなどの食品にストレス軽減や血圧低下などの効果があるという科学的根拠は希薄で、認知症に効果があるという噂はウソです。

 

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