高市カラー滲む「骨太の方針2026」、医療財政の理想と現実
以下は、記事の抜粋です。
骨太の方針2026での医療関連の内容
2026年度の骨太の方針の大原則を掲げる「第1章 マクロ経済運営の基本的考え方」で言及されている関連内容を以下に抜粋する。
「強い経済、持続可能な財政と、質の高い全世代型社会保障とを同時に実現する社会保障改革を強化する。現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくとの方針の下、給付と負担の見直しの検討、安心して必要なサービスを受けることのできる医療・介護提供体制の構築、DXやAI・ロボティクスの活用を通じたサービスの質の向上、攻めの予防医療等に取り組む」
ここから察するに、高市政権最大の命題は「現役世代の保険料引き下げ」ということになるだろう。
同章の「2.全世代型社会保障の構築」ではさまざまな取り組みの方向性が記述されている。箇条書きすると以下のようになる。
●医療・介護・障害福祉分野でのDX・AIなどによる生産性向上と職員配置の柔軟化
●医療・介護事業者の経営実態の把握と物価・賃金上昇を踏まえた経営安定と処遇改善
●医療機関などの経営が悪化した場合の診療報酬の追加調整の検討
●2040年を見据え、病床数の適正化や医療機関の再編・集約化の推進
●地域包括ケアシステムを深化させ、地域に応じた効率的な医療・介護提供体制を整備
●医師偏在対策を強化し、地域事情を考慮しながら医学部を定員削減
●看護職員や介護・福祉人材の確保・定着、潜在人材の活用、勤務環境改善の推進
●医療・介護施設の老朽化・災害対策を含めた計画的な施設整備を支援
●医療保険での高齢者の窓口負担見直しについて令和9年度予算編成過程で結論を得る
●介護保険では、2割負担の対象基準見直しを2026年度中に結論を得る
●医療・介護保険での金融所得・資産の扱いや、OTC類似薬の保険給付見直しを推進
●バイオ後続品の普及を踏まえ、先行バイオ医薬品の保険給付の在り方を検討
●長期処方・リフィル処方箋・地域フォーミュラリ・休薬・減薬を推進し、医療費の適正化を図る。
●スイッチOTC化を進め、セルフメディケーションを推進
●電子カルテ・電子処方箋の普及や医療DXを推進し、医療・介護情報の連携・利活用基盤を整備
現実的か試算してみると…
これらを概観すると、高市政権は、DXなどを通じた生産性向上、医療機関の再編・集約、薬剤費の適正化、高齢者の保険料・医療費負担見直しなどを通じて、現役世代の保険料引き下げを狙っていると考えられる。さてこれが可能だろうか?
まず、2026年度予算ベースでの保険料収入は84.5兆円1)。うち直接家計が負担することになる被保険者負担は44.8兆円である。この中には、65歳以上が負担する後期高齢者医療制度保険料、介護保険第1号保険料、65~74歳の国民健康保険の保険料が含まれている。
これらの総額6.6兆円を被保険者負担の総額44.8兆円から引くと、現役世代の保険料総額は38.2兆円となる。仮にこれを10%引き下げるとなると、3.8兆円の財源が必要になる。
さて前出の骨太の方針に列挙された政策で捻出できるだろうか? ちなみに列挙された政策のほとんどは生産性向上策であり、その経済的効果はおよそ推定が不可能である。唯一、試算ができそうなのは、「医療保険での高齢者の窓口負担見直し」である。これを維新がよく唱える「高齢者自己負担率の一律3割」で考えてみよう。
ある研究4)では、70歳以上の自己負担割合を3割に引き上げることによる医療費削減効果は1.3~6.7兆円とされている。幅があるのは、自己負担引き上げによる医療需要の変化を想定したものである。
順当に考えるならば、実現は可能かもしれないとなる。しかし、医療需要が抑制されない1.3兆円というシナリオならば、実現不可能である。
だが、ここでもう1つ問題がある。高市政権がいま取り組んでいる食料品の消費税の一時的な撤廃である。これについて、以前の財務省の説明では、年間約5兆円の税収減となる。
ちなみに前述の国保保険料の平均年額で言えば、10%の保険料引き下げは年間1万円の減額になるが、おそらくこれで可処分所得が増えたと思う国民はまれだろう。こうして考えてみると、失礼ながら現役世代の保険料引き下げは、かなり砂上の楼閣と言わざるを得ないのだが…。
「財源」はどこにもなくて、借金をしてバラマキ、そのツケは若い世代に、、、この繰り返しですか。


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