シャラポワが飲んでいたメルドニウム(meldonium)

シャラポワが薬物違反 12日から暫定資格停止処分
以下は、記事の抜粋です。


女子テニスの元世界ランキング1位マリア・シャラポワ(28=ロシア)が3月7日、1月の全豪オープンのドーピング検査で禁止薬物の「メルドニウム」に陽性反応が出たことを明らかにした。国際テニス連盟から、3月12日から暫定的な資格停止処分を受けることも決まった。

競技力向上の効果があるとされるメルドニウムは、今年1月から新たな禁止薬物のリストに追加された。治療用に飲んだ薬に含まれていたいたとのことで「医者から処方され、この10年服用してきた。禁止薬物のリストに入ったことを知らなかった」と、禁止されていることを自覚しての摂取は否定した。それでも「大きな過ちを犯した。自分の体に何を取り入れているかの責任は自分にある」と違反を認めた。

◆メルドニウム 米国立医学図書館によると、ラトビアの研究所で開発され、服用すると気分が向上し、より活発になるという。不整脈、糖尿病などの治療にも使われる。世界反ドーピング機関(WADA)はことし1月から代謝調節剤として禁止薬物リストに加えた。使用者に競技能力の向上があるとしている。


メルドニウムよりも、ミルドロネート(mildronate)という名前の方が一般的なようで、WighWireという文献検索サイトで、”meldonium”で”Title & Abstract only”、”Include PubMed”で検索すると2件しかヒットしませんが、”mildronate”だと88件ヒットしました。

メルドニウムは、ロシアやウクライナなどのヨーロッパの一部で市販され、狭心症や心筋梗塞などの心筋虚血性疾患の治療に用いられています。アメリカや日本では承認されていません。

最初の臨床試験は2005年に行われ、2010年に行われた狭心症患者に対するメルドニウムと運動療法を組み合わせた臨床試験において、狭心症患者の運動耐性を向上させると報告されています。特に大きな副作用は認められなかったようです。

作用機序はL-カルニチン(carnitine)合成系酵素の阻害だとされています。カルニチンは、脂肪酸をミトコンドリアへ運搬する役割をもっていますので、メルドニウムを飲むと、心臓での脂肪酸の利用が減って糖の利用が増えることになります。おそらく、糖をエネルギー源として使う方が脂肪よりも酸素消費という点では効率が良いので、虚血性心疾患に有効なのかもしれません。

日本でも、大鵬薬品がミルドロネート(メルドニウムの別名)を心不全用剤として開発していましたが、残念ながら脱落したようです(資料をみる)。脱落の理由はわかりません。一方、L-カルニチンは医薬として承認されており、わざわざサプリとして飲むヒトもいます。

おそらくシャラポアは、狭心症患者で報告されている運動耐性(スタミナ)の増強を狙って飲んでいたのだと思います。彼女が狭心症や心筋梗塞を患っているのでなければ、ドーピング行為だとされても仕方がないでしょう。メルドニウムが健常人にどの程度の効果があるのか知りたいですが、彼女が10年も飲み続けたことを考えると、副作用は少ないのかもしれません。

追加情報:昨年の東京マラソンで優勝したエチオピアのエンデショー・ネゲセ(Endeshaw Negesse)やソチ五輪でのロシアのフィギュアスケート団体金メダルに貢献したアイスダンスのエカテリーナ・ボブロワ(Ekaterina Bobrova)らの検体からもメルドニウムが検出されたそうです。

コメント

  1. 鼻毛マン より:

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    この作用機序だとそもそも、良い方向に効きそうもないです。虚血心筋では確かに糖代謝が優位になりますが、健常心筋では脂肪酸代謝が優位です。優位な脂肪酸代謝を抑制しても、虚血心筋と同じような条件になると思うのですが。それとも、血流豊富な場合は、また違う結果になるのですかね。いずれにしても、心筋に対する効果はあまりないんじゃないでしょうか。

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