微量の血液でがん遺伝子60種を解析 国立がん研
以下は、記事の全文です。
わずかな血液でがんに関連する60種類の遺伝子異常をまとめて調べる新手法を開発したと、国立がん研究センターのチームが16日発表した。これだけ多くの遺伝子異常を調べるにはがん組織を取り出す必要があったが、新手法なら体に負担をかけずに繰り返し検査できる。一人ひとりのがんの進み方に合った薬の選択につながる成果だという。
がんの発症にかかわる遺伝子異常は、乳がんや肺がんなどの種類を超えて共通するものがあると最近の研究でわかってきた。特定の遺伝子異常を標的にした抗がん剤は、効果が認められたがんとは別の種類のがんにも効く可能性がある。ただ、がん関連の遺伝子異常を網羅的に調べるには、針を刺すなどしてがんの組織を取る必要があった。
研究チームは、がん組織から出た微量のDNAが患者の血液中に含まれることに着目。膵臓(すいぞう)がん患者48人の血液でがん由来のDNAを最先端の解析装置で調べた。データの解析手法を工夫することで、5ミリリットルの血液からでも60種類の遺伝子異常を正確に検出できることを確認したという。谷内田真一ユニット長は「膵臓がんで確認したが、ほかのがんでも使える手法だ」と話している。
がん組織を取り出さずに血液中に存在するがん細胞やがん細胞のDNAを検出する技術は既に存在しており、”Liquid Biopsy”と呼ばれています(記事をみる)。
上の記事に書かれている技術は、壊死したがん細胞から血中に放出された血中循環DNA (circulating cell-free DNA: cfDNA)を測定するもののようです(説明をみる)。
新しいと主張しているのはおそらく、60種類を一度に測定することかもしれません。しかし、血中に存在するがん細胞由来のDNA量は少なく診断の確実性も低いため、既に存在が明らかになった固形がんの進行度のモニタリング、抗がん剤の薬効評価、予後評価などへの応用は期待されていますが、がんを発見するためのスクリーニングとしては、あまり期待できないと思います。
がんセンターのプレスリリースがありました(プレスリリースをみる)。内容は以下に要約されると思います。
既存のキットを組み合わせた新たな前処理法を開発し、シークエンスデータの情報解析についても工夫を行なうことで、これまでの1/20である10ng程度のcfDNAからもイルミナ社の次世代シークエンサーによるターゲットシークエンス解析を行なうことのできる独自の手法を開発しました。
同手法を用いて進行膵臓がん患者さんの血液からゲノム解析を行った結果、約30%に治療標的となり得る遺伝子異常を検出しました。
既存のキットと機械を用いて、これまでの方法を改善したという地味な報告です。
コメント
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既存の方法を組み合わせて、
現状で最善のパフォーマンスを目指すことが臨床というものゆえ、いい話だと思いました。
「もんじゅ」問題を解決するのも、真剣な研究ゆえに地味なのに命懸けでしょう。
http://kiseikanshi.main.jp/2015/12/10/saisyoripabukome/
今日の夜だそうです。