病院全体での輸液についてのクロスオーバー試験で、乳酸リンゲル液と生理食塩水の効果に有意差無し

輸液選択、乳酸リンゲル液vs.生理食塩水
以下は、記事の抜粋です。自分用のメモです。


日常的に行われている静脈内輸液投与に関して、乳酸リンゲル液のほうが生理食塩水よりも臨床的に優れているかは不明である。オタワ大学のLauralyn McIntyre氏らは、病院単位で期間を区切って両者を比較した検討において、乳酸リンゲル液を使用した場合に、初回入院後90日以内の死亡または再入院の発生率は有意に低下しなかったことを示した。

研究グループは、カナダのオンタリオ州にある7つの大学および地域病院で、非盲検、2期間、2シークエンス、クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。静脈内輸液を病院全体で12週間ずつ乳酸リンゲル液または生理食塩水に割り付け、アウトカムを比較した。乳酸リンゲル液または生理食塩水使用への切り替えは、ウォッシュアウト後に行った。

主要アウトカムは、初回入院後90日以内の死亡または再入院の複合とした。副次アウトカムは、主要アウトカムの各項目、入院期間、初回入院後90日以内の透析導入、90日以内の救急外来受診、自宅以外の施設への退院とした。

試験は2016年8月~2020年3月に行われ、COVID-19のパンデミックにより試験が中断される前に、7病院が12週間ずつ2期間の試験を完了した。主要アウトカムに関するデータは、4万3,626例の適格患者から入手できた(乳酸リンゲル液群2万2,017例、生理食塩水群2万1,609例)。

初回入院後90日以内の死亡または再入院の複合発生率は、乳酸リンゲル液群20.3±3.5%、生理食塩水群21.4±3.3%であった。副次アウトカムの結果もすべて、主要アウトカムの結果と一致していた。


元論文のタイトルは、”A Crossover Trial of Hospital-Wide Lactated Ringer’s Solution versus Normal Saline(病院全体を対象とした乳酸リンゲル液と生理食塩水の比較試験)です(論文をみる)。

どでは循環血流量減少を認める患者に対して、生食かリンゲル液を投与します。循環血流量の減少は、ショックを引き起こす可能性があり、様々な症状が現れます。初期症状としては、脱力感、脈圧の低下、頻脈などが挙げられます。進行すると、低血圧、錯乱、呼吸困難、皮膚の蒼白や冷感、尿量減少などが現れ、多臓器不全に至ることもあります。

乳酸リンゲル液は、生理食塩水に加えてカリウムやカルシウム、乳酸ナトリウムなどを配合し、より生体に近い電解質組成を持つため、代謝性アシドーシスの補正や広範な体液喪失時の補液に適しているように思われますが、この論文は、死亡や再入院という重症化を示す指標でみても、生食とリンゲル液に差はなかったという結論です。ちょっと意外でした。

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