6種のスタチン、使い分けは?
自分用のメモです。
現在わが国ではプラバスタチン(メバロチン®)、シンバスタチン(リポバス®)、フルバスタチン(ローコール®)、アトルバスタチン(リピトール®)、ピタバスタチン(リバロ®)、ロスバスタチン(クレストール®)が使用可能ですが、これまでのスタチンを用いた国内外の大規模臨床介入試験や断面調査研究の結果から、いずれのスタチンを選択しても長期の安全性には差がないことが明らかになっています。
また、スタチン不耐に関しても、スタチン間での違いは報告されていません。そして、スタチンの種類にかかわらず、LDL-C低下率と脳心血管イベント抑制効果の間には正の相関が認められています。それゆえ、LDL-C管理目標値を達成するために、それぞれのLDL-C低下作用を勘案してスタチンを選択するとよいです。
ただし、冠動脈疾患の二次予防においては、治療開始前LDL-C値にかかわらず、発症早期より最大耐用量のストロングスタチンを第一選択とした薬物療法が、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』では推奨されています。
半減期が短いスタチンは朝よりも夕方に内服したほうがLDL-C低下作用が大きいことが報告されているため、短時間作用型スタチン(プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン)は夕方に投与するのがよいと考えられます。
また、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチンは薬剤代謝酵素(CYP)で代謝されるため、薬剤相互作用に留意する必要があります。シンバスタチン、アトルバスタチンは、大量のグレープフルーツジュース摂取による相互作用も報告されているため注意が必要です。とくに薬剤の代謝能が低下し、多剤服用する機会が多い高齢者においては十分な監視と注意が必要です。
ロスバスタチン(クレストール®)は、半減期が 20 時間と,従来のスタチンの中で一番長いとされています。また、ピタバスタチン (リバロ®) 、プラバスタチン (メバロチン®)、ロスバスタチン (クレストール®)はCYPでほとんど代謝されず、 未変化体のまま胆汁排泄されるため、 グレープフルーツや他の薬剤との代謝酵素を介した相互作用も少ないと思われます。
これらを考えるとシンバスタチン(リポバス®)、フルバスタチン(ローコール®)、アトルバスタチン(リピトール、カデュエット®)は代謝の問題があって使いにくいので、軽症なら歴史のあるプラバスタチン(メバロチン®)、重症や冠動脈疾患の二次予防には、ピタバスタチン (リバロ®) あるいは、ロスバスタチン (クレストール®)のストロングスタチンが使い易いです。また、夕方に服用するのが苦手なヒトには、半減期の長いロスバスタチン (クレストール®)が向いています。
また、関連記事で紹介したように、すべての原因による認知症に対し最も顕著な予防作用を示したスタチンは、ロスバスタチン(HR:0.72)だと報告されています。
ということで、今のところ私は、プラバスタチン(メバロチン®)とロスバスタチン (クレストール®)しか処方していません。最近は、認知症の予防効果を考えてロスバスタチン (クレストール®)を処方することが多いです。
服用を嫌がるヒトには、LDL-C低下率と認知症や脳心血管イベントの抑制効果の正の相関について説明することにしています。
関連記事
スタチンと認知症リスクに関するメタ分析
スタチンの使い分け

2018年6月4日の「日経メディカル」に掲載された、医師会員によるアンケート結果


コメント