血小板第4因子(PF4)は、老いたマウスと若いマウスの両方で学習力と記憶力を向上させる

老化した脳を若返らせる血液因子が特定される、別々の研究チームがひとつの答えにたどりつき3本の論文を同時公開
以下は、記事の抜粋です。


若返りに関する数々の研究に共通する因子の特定につながる以下の3本の論文が2023年8月16日付のNature、Nature Aging、Nature Communicationsで発表されました。

1.Platelet factors attenuate inflammation and rescue cognition in ageing
2.Platelet factors are induced by longevity factor klotho and enhance cognition in young and aging mice
3.Platelet-derived exerkine CXCL4/platelet factor 4 rejuvenates hippocampal neurogenesis and restores cognitive function in aged mice

1.若いマウスの血液で老いたマウスの能力を回復させる研究をしていたカリフォルニア大学サンフランシスコ校のヴィレダ氏らのチームは、出血した際に血液を凝固させる機能を持つ血小板第4因子(PF4)が脳の機能を回復させることを突き止めました。

2014年、ヴィレダ氏は若いマウスの血液から赤血球を除いた血漿が、年老いたマウスの脳機能を回復させることを発見し、若い血の血漿には古い血より多くのPF4が含まれることを突き止めました。

PF4のみを老齢のマウスに投与したところ、若いマウスの血漿を注射した時とほぼ同じ効果が発揮され、老齢のマウスが学習力や記憶力を問うテストで優秀な成績を収めました。

ヴィレダ氏は「PF4が老化に関連した免疫因子を減少させ、脳の炎症を抑制し、脳の柔軟性を高め、認知力を向上させるのです。私たちは、ヒトでは70代に相当する生後22カ月のマウスを飼育していますが、PF4はマウスの能力を30代後半から40代前半まで若返らせました」と話しました。

カリフォルニア大学のデーナ・デュバル氏は以前、「クロトー」というホルモンを注射することで年老いたサルの脳が活性化したことを報告しましたが、クロトー自体は血液脳関門を突破しないため、どうして脳が若返るのかは判然としていませんでした。

クロトーを投与され認知機能が向上したマウスの血液を分析したデュバル氏らは、クロトーにより血液に含まれる血小板が活性化され、これにより血小板からPF4が放出されることを確認しました。

PF4をマウスに投与する実験を行ったところ、老いたマウスと若いマウスの両方で学習力と記憶力の向上がみられました。デュバル氏は、PF4が欠損したマウスもクロトーで認知力が向上することを確認しており、これはPF4以外にも認知機能を改善させる因子が存在している可能性を示しています。

クイーンズランド脳研究所のタラ・ウォーカー氏らの研究チームは新しい研究で、運動によりマウスの血液中にPF4が放出され、これが脳細胞の新生を促進させて認知力を改善させることを発見しました。

PF4は、運動により放出される情報伝達物質「エクセルカイン」の一種としても知られています。以前の研究により、運動での認知機能の改善にはエクセルカインが関与していることが判明してしていましたが、今回の研究によりPF4単体を投入することで運動に匹敵する認知機能改善効果が確認されたことから、このメカニズムには血小板由来のエクセルカインであるCXCL4、つまりPF4が関与していることが確かめられました。


若いマウスでも認知機能改善効果があるのがすごいです。ヒトでも同様なら、試験前のドーピングなどに使われる可能性があると思います。

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