進行性メラノーマに対するニボルマブ(抗PD-1抗体)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)の併用

Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Melanoma
以下は、論文要旨の抜粋です。


背景:メラノーマ患者において、イピリムマブ(ipilimumab、抗CTLA-4抗体)は全生存期間を延長させ、ニボルマブ(nivolumab、抗PD-1受容体抗体)は第1相試験で持続的な腫瘍縮小を示した。2種の抗体の異なる作用機序と有効性を示した前臨床データに基づいて、進行メラノーマ患者に対するニボルマブとイピリムマブの併用療法に関する第1相試験を行った。

方法:ニボルマブとイピリムマブを3週ごとに4回静脈内投与した。その後ニボルマブを単独で3週ごとに4回投与した。その後は併用投与を12週ごとに最大8回行った(同時投与レジメン)。逐次投与レジメンでは、イピリムマブによる治療歴がある患者にニボルマブを2週ごとに最大48回投与した。

結果:53例にニボルマブとイピリムマブの同時投与を行い、33例に逐次投与を行った。同時投与レジメン群における客観的奏効率は40%であった。患者の65%において臨床的効果を示すエビデンスが認められた。許容できる有害事象範囲での最大用量により、患者の53%が客観的奏効を達成し、その全例で80%以上の腫瘍縮小が認められた。治療に関連するグレード3~4の有害事象が同時投与レジメン群で53%に認められたが、単剤療法での過去の経験と質的に類似しており、一般に可逆性であった。逐次投与レジメン群では、グレード3 ~4の有害事象は18%に認められ、客観的奏効率は20%であった。

結論:ニボルマブとイピリムマブの同時投与は、管理可能な安全性プロファイルを有し、既報の単剤療法とは異なると思われる臨床的効果を示し、多くの患者で迅速かつ大幅な腫瘍縮小を示した。


既にイピリムマブ(ipilimumab、抗CTLA-4抗体)は、Yervoy®という商品名で進行性メラノーマの治療薬として米国FDAによって承認されています(日本ではまだです)。CTLA-4はT細胞刺激後に発現が誘導され、T細胞活性化経路をダウンレギュレートする免疫チェックポイント分子です。イピリムマブはCTLA-4を抑制して、患者の腫瘍に対する免疫を非特異的に増強する薬です。メラノーマ患者の生存期間を有意に延長し、投薬された患者の20%以上が2年以上生存したそうです(記事をみる)。

Programmed death 1 (PD-1)は、CTLA-4とは別の免疫チェックポイント分子で、PD-L1とPD-L2という2つのリガンドが知られており、これらの抗体も進行性メラノーマに有効だと報告されています(記事をみる)。

CTCL-4とPD-1は、どちらもT細胞の活性化を抑制します。免疫チェックポイントとは免疫が自らの体を攻撃しないためのメカニズムで、がん細胞はこれを利用して免疫反応から逃れていると思われます。これらのことから、ニボルマブとイピリムマブの併用は、T細胞による細胞性免疫を非特異的に活性化すると考えられます。

いずれにしても、T細胞による細胞性免疫を非特異的に活性化しただけで、これほど大きな臨床効果が得られたのは驚きです。今年の6月に始まったというランダム化第3相試験の結果を注目しています。

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