だセマグルチド、12~18歳でも優れた抗肥満効果
以下は、記事の抜粋です。
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、成人の肥満治療薬として欧米で承認を得ている。オーストリアのDaniel Weghuber氏らは「STEP TEENS試験」において、肥満症の青少年(12~18歳未満)に対する本薬の有用性を検討し、セマグルチド+生活様式への介入は生活様式への介入単独と比較して、68週の時点でBMI値の有意な低下をもたらし5%以上の体重減少の達成割合を有意に増加させたが、消化器系の有害事象の頻度が高かったことを示した。
12~18歳の肥満、過体重の無作為化試験
STEP TEENSは、8ヵ国37施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIIa相試験であり、2019年10月~2020年7月の期間に参加者のスクリーニングが行われた。
対象は、年齢12~18歳未満で、肥満(BMIが性・年齢別の成長曲線で95パーセンタイル以上)または少なくとも1つの体重関連の併存症を有する過体重(同85パーセンタイル以上)の青少年であった。
被験者は、セマグルチド(2.4mg)またはプラセボを週1回、68週間皮下投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。全例が減量を目的とする生活様式への介入(栄養、運動)を受けた。
主要エンドポイントは、ベースラインから68週目までのBMIの変化率とされた。副次エンドポイントは、68週目までの5%以上の体重減少であった。
10%、15%、20%以上の体重減少も著明に改善
201例(平均年齢 15.4歳、女性 62%)が無作為化の対象となり、このうち180例(90%)が試験を完遂した。セマグルチド群に134例、プラセボ群に67例が割り付けられた。1例(過体重)を除く全例が肥満だった。ベースラインの平均体重(109.9kg vs.102.6kg)、BMI値(37.7 vs.35.7)、ウエスト周囲長(111.9cm vs.107.3cm)が、セマグルチド群でわずかに高値であった。
ベースラインから68週目までのBMIの平均変化量は、セマグルチド群が-16.1%と、プラセボ群の0.6%に比べ有意に良好であった。
68週の時点で、5%以上の体重減少の達成割合は、セマグルチド群が73%(95/131例)であったのに対し、プラセボ群は18%(11/62例)であり、セマグルチド群で有意に優れた。
また、68週時の10%以上の体重減少(62% vs.8%)、15%以上の体重減少(53% vs.5%)、20%以上の体重減少(37% vs.3%)についても、セマグルチド群で達成割合が顕著に高かった。
セマグルチド群で改善された心血管代謝リスク因子として、ウエスト周囲長(-12.7cm vs.-0.6cm)と糖化ヘモグロビン値(-0.4% vs.-0.1%)のほか、総コレステロール、LDLコレステロール、VLDLコレステロール、トリグリセライド、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が挙げられた。
最も頻度の高い有害事象は消化器症状(主に吐き気、嘔吐、下痢)で、セマグルチド群のほうが高頻度(62% vs.42%)であったが、重症度は全般に軽症~中等症であり、発症期間中央値は吐き気、嘔吐、下痢とも2~3日と短かった。セマグルチド群の5例(4%)で急性胆嚢疾患が発現し、いずれも胆石症で、1例が胆嚢炎を併発した。重篤な有害事象は、セマグルチド群で11%(15/133例)にみられた。
元論文のタイトルは、”Once-Weekly Semaglutide in Adolescents with Obesity(青年期肥満症患者における週1回のセマグルチド投与)”です(論文をみる)。
セマグルチドは、皮下注射剤(オゼンピック®)と経口剤(リベルサス®)の2種類があり、日本では糖尿病治療薬としてだけ保険適用されています。
肥満症の治療には保険適用されていませんが、日本でも「GLP-1ダイエット」と称して、肥満の治療を行っているクリニックがあり、ネットでも多くの宣伝が見られます。
上の記事にも書かれているように、セマグルチドは他のGLP-1受容体作動薬よりも減量効果があるようです。肥満症治療薬として認められないのは、肥満を放置して糖尿病や脂質異常症になってから治療する方が国としても安上がりだからでしょうか?BMIが35を超えるような肥満は、「病気」だと思うのですが、、、
以下は、2020年7月9日付の「GLP-1 受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」です。
今般、一部のクリニック等において、2 型糖尿病治療薬である GLP-1 受容体作動薬を、適応外使用である美容・痩身・ダイエット等を目的として自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見されます。我が国において 2020 年 7 月時点で、一部の GLP-1 受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません。したがって、2 型糖尿病治療以外を適応症として承認された GLP1 受容体作動薬は存在せず、美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、2 型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていません。医師とくに本学会員においては、不適切な薬物療法によって患者さんの健康を脅かす危険を常に念頭に置き、誤解を招きかねない不適切な広告表示を厳に戒め、国内承認状況を踏まえた薬剤の適正な処方を行ってください。また、特に本学会専門医による不適切な薬剤使用の推奨は、糖尿病専門医に対する国民の信頼を毀損するもので本学会として認められるものでないことを警告します。
この警告から2年以上経っていますが、保険適用するかどうかは別として、肥満治療薬としてまだ認められないのでしょうか?
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