“塩野義製薬の飲み薬早期承認を” 日本感染症学会などが提言…これはひどい!!学会員は黙っているのか?

“塩野義製薬の飲み薬早期承認を” 日本感染症学会などが提言
あまりにひどい話なので、全文を引用します。


新型コロナウイルスによる医療のひっ迫を防ぐために、重症化リスクが低い患者も服用できる飲み薬が必要だとして、日本感染症学会などは塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬の早期の承認を求める提言を厚生労働省に提出しました。

提言は9月2日、日本感染症学会と日本化学療法学会が厚生労働省に提出しました。
軽症の段階で使える新型コロナの飲み薬は、重症化リスクが高い患者用のものが承認されていますが、リスクの低い患者が使えるものはなく、提言では医療のひっ迫を改善するには高齢者などと同居している軽症の患者にも速やかに薬を投与し、感染拡大を抑えることが大切だとしています。
そのうえで、リスクの低い患者にも使うことを目指して塩野義製薬が開発した飲み薬「ゾコーバ」について、「治験では呼吸器症状の改善が示され、ウイルス量の減少も示されている」として、国は迅速に承認を検討すべきだとしています。
「ゾコーバ」は、新たに創設された緊急承認の制度を使って申請されましたが、厚生労働省の審議会では、ことし7月に「有効性を推定できるデータが不十分だ」として、承認が見送られ、今月にも示される新たな治験の結果を踏まえて改めて審査が行われる見通しとなっています。
記者会見した日本化学療法学会の松本哲哉 理事長は「新たなデータが出れば、一日も早く、審議を開始し、早期に承認してほしい」と話していました。


以下は、これに対する岩田健太郎氏のtwitterでのコメントです。


感染症学会、化学療法学会理事長の名前で厚労大臣に出された「提言」。いくらなんでもひどすぎるので、絶望しています。一般の方や医師会くらいが言うならともかく、専門家集団とみなされる学会がこれでは救いようがありません。 kansensho.or.jp/uploads/files/

まず「新しい抗ウイルス薬の臨床試験において、抗ウイルス効果は主要評価項目の一つです」とありますが、間違いです。抗ウイルス薬が目指すのは「患者の治癒」です。ウイルスを「殺す」のは手段であり、目的ではありません。これはEBMの基本のきの字であり、プロがいろはを知らないのは、言語道断です。

「病気の速やかな改善に至ることは、日本の新型インフルエンザの死亡率が世界で最も少なかったことの一つの要因と考えられます」。これは当時の会議でも申しましたが根拠不十分です。確かに米国とかでは死亡は多かったですが「自宅で安静」を基本とした欧州各国も日本と死亡者は大差ありませんでした。

「日本ではすでに特例承認されている2種類の経口薬が使用可能となっていますが、重症化リスクを有しない患者に対する臨床試験は行われていない(中略) 国産抗ウイルス薬は、重症化リスクのない軽症者における臨床試験において呼吸器症状の改善が」 ここが最大の問題です。リスクない軽症者に対する堅牢なエビデンスはありません。また、自然治癒する可能性の高い「リスクのない軽症患者」を治癒するプライオリティは低いです。エビデンスレベルで言えば現在承認されているラゲブリオ、パキロビッドのほうがエビデンスレベルは高いです。

この文章を起草したのが日本の製薬メーカーなのか、医学者なのか、その両方なのか分かりませんが、あきらかに「下心」のある、学術界が出すにはあまりに非科学的な悪文です。読むのは大臣であり、医学、感染症学の素人であることを考えると、非常に悪質です。かつて日本の感染症系学会は製薬メーカーの太鼓持ちのような「よいしょ」をたくさんしていて、僕ら真面目な専門家を鼻白ませていました。最近はそういうエゲツないことをする人は減りましたが、理事長名でこれをやるかな。また往時の黒歴史に逆戻りか、と暗澹たる思いになりました。

昔と違い、今は優秀な若手感染症医がたくさんいるから、こんな不真面目な文章の誤謬はすぐに看破されます。もちろん、「立場」を慮って忖度する人もいるとは思いますが、学会内にだって、ちゃんとした人もいるはずだ、と期待したいですね。黙殺しちゃだめですよ。

あと、揚げ足とってくる人が出てくることを想定して先回りしておくと、「主要評価項目」とか、ウイルス量とかで、理論武装っぽい、その実「言葉遊び」をしていることは承知しています。しかし、これも一種のご飯論法なのでやはり「誤謬」というべきなのです。


この提言を行った日本感染症学会の四柳 宏 理事長(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 感染症分野長)は、この薬の臨床試験に関わっており、4月には主要な研究者として、臨床試験結果について欧州の感染症関連学会で発表も行っており、それが塩野義製薬のホームページに掲載されています(塩野義のホームページをみる)。どう考えても利益相反です。

日本感染症学会や日本化学療法学会のまともな会員はこのような暴挙というか愚挙を見逃すべきだはないです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました