米国科学誌Scienceに掲載されたAβ関連論文について
以下は、エーザイが出したプレスリリースの全文です。
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫)は、2022年7月22日に米国科学誌Scienceに掲載された記事に関して、当社が開発中の抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」とは一切関係がないことをお知らせいたします。
同記事はAβオリゴマーの一種であるAβ*56に関する研究論文の信憑性について調査がされていると報じていますが、本件はレカネマブとは一切関係がありません。レカネマブは、201試験においてAβ除去作用と臨床症状悪化抑制の相関関係が認められており、現在、臨床第Ⅲ相Clarity AD試験を実施中です。
当社は、アルツハイマー病当事者様とそのご家族、医療関係者の皆様に、新たな治療薬を一日でも早くお届けするために、引き続き全力で取り組んでまいります。
以下は、その関連論文についての記事とその抜粋です。
アルツハイマー病の原因に関連する重要論文に画像捏造の可能性
2006年に科学誌「Nature」に掲載された、アルツハイマー病の主要原因についての研究論文で、画像が捏造されたものであった可能性が指摘されています。
Potential fabrication in research images threatens key theory of Alzheimer’s disease(アルツハイマー病のアミロイド説を脅かす、研究上の捏造の可能性)
指摘があったのは、ミネソタ大学のシルヴァン・レスネ氏を筆頭著者として2006年に発表された論文。アミロイドβがアルツハイマー病の主要原因である決定的証拠となるような、そして治療法の可能性を示すようなサブタイプを発見し、ラットの認知症を引き起こす原因になったことを証明したという内容です。
以下がその論文ですが、冒頭部に「Nature編集部は、本論文の一部の図表に関する懸念について注意喚起を受けています。Natureはこれらの懸念について調査中であり、編集部からのさらなる回答はできるだけ早く行われる予定です。その間、読者はこの論文で報告された結果を使用するにあたっては注意することをおすすめします」との注意書きがつけられています。
A specific amyloid-β protein assembly in the brain impairs memory(脳内の特定のアミロイドβタンパク質の集合体が記憶を損なう)
当該論文は発表以降、2300回以上も引用されており、またアメリカ国立衛生研究所はアミロイドβ研究へ2億9000万ドル(約400億円)の支援を行っています。
ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは「これが本当なら詐欺を超えています。人道に対する罪です」「最大の損失は、間違った方向への16年間の研究です」といった強めのコメントがある一方で、なんらかのアミロイドが原因物質である可能性はあるものの、レスネ氏の主張したアミロイドβ56はすでにアルツハイマー病の原因物質候補からは外れているため、この論文に捏造があったとしても影響はそれほど大きくないという見方もあります。
アミロイドAβが低分子オリゴマーとなり、さらに多くが集まってプロトフィブリルなど の高分子オリゴマー化する。凝集が進んで形成された線維状のAβ集合体など が、神経細胞を損傷するというのが「アルツハイマー病のアミロイド説」です(説明をみる)。
Aβ のオリゴマーはその大きさにより,2~3 分子からなる low-n オリゴマー19,12 分子程度のAβ-deriveddiffusible ligand(ADDL)17 や Aβ*5620,50 分 子 以 上の線維に近いプロトフィブリル21 に分類されています。
これらの Aβ オリゴマーのいずれが実際の AD 脳で神経毒性を発揮しているか、あるいはどれにもたいした毒性がないのかはまだ不明です。
こんな状況で、「当社が開発中の抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」とは一切関係がない」と言えるのでしょうか?
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