悪性軟部腫瘍に対する初の分子標的薬パゾパニブはマルチキナーゼ阻害薬

【新製品】キナーゼ阻害剤「ヴォトリエント」 グラクソ・スミスクライン
以下は、記事の抜粋です。


グラクソ・スミスクラインは悪性軟部腫瘍で初の分子標的薬「ヴォトリエント錠200mg」(一般名:パゾパニブ)を発売した。

血管内皮増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、幹細胞因子受容体の三つを標的に血管新生を阻害し、脂肪・筋肉・神経・血管などに発生する予後不良で重篤な悪性腫瘍を治療する。

薬価は1錠4027.20円。通常、成人には1日1回800mgを食事の1時間以上前か食後2時間以降に経口投与し、患者の状態により適宜減量する。


悪性軟部腫瘍は、脂肪、筋肉、神経、血管などの軟部組織に発生する悪性腫瘍で、日本における罹患患者は約3000人と推定されています。これまで日本では、ドキソルビシンとイホスファミドという2つの化学療法薬のみが悪性軟部腫瘍に適応を有しており、標準薬として使用されてきました。

パゾパニブ(pazopanib)は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)および幹細胞因子受容体(c-Kit)の3つのキナーゼに対する阻害作用を持ち、マルチキナーゼ阻害薬に分類されます。

FDAは2009年10月、パゾパニブを進行型腎細胞がんの適応、今年の4月に悪性軟部腫瘍の適応で承認しました。日本での腎細胞がんへの適応はまだ承認されていません。メカニズムとしては、悪性軟部腫瘍の多くでVEGFR、PDGFR、あるいはそれぞれのリガンドであるVEGFやPDGFが高発現していることが考えられますが、イマチニブとBcr-Ablの関係ほど明確ではありません。

マルチキナーゼ阻害薬には他に、ソラフェニブ(sorafenib、ネクサバール®)やスニチニブ(sunitinib、スーテント®)などがあり腎細胞がんなどに使われています。これらは、同じようなチロシンキナーゼ阻害パターンを示しますが、パゾパニブは「QOLが高い」ために比較的使いやすいといわれています。

1錠200mg約4000円で1日1回800mgということは、年間では約588万円です。多くの患者さんは、高額療養費制度を利用することになるでしょう。今後しばらくの間は、新しい分子標的薬が出る度に、医療保険の負担がドンドン増えることになりそうです。

関連記事
慢性骨髄性白血病:イマチニブよりも良く効くダサチニブとニロチニブ

コメント

  1. やす より:

    SECRET: 0
    PASS:
    「骨軟部肉腫」という言い方がされますが、バゾバニブは「骨肉腫」には効かないのですか?

  2. やす より:

    SECRET: 0
    PASS:
    すみません、薬品名を書き間違えました。パゾパニブです。

  3. tak より:
  4. やす より:

    SECRET: 0
    PASS:
    >takさん
    お答えどうもありがとうございます。
    情報を得たいと思い、がん研有明病院の相談電話で聞いたところ、同病院では骨肉腫に使われているケースもあるとのことでした。詳細は聞いていません。

タイトルとURLをコピーしました