低LDLコレステロール血症(低LDL-C血症)
最近、LDLコレステロール値が36mg/dLというヒトを診たので調べてみました。以下は、抜粋です。
続発性低LDL-C血症を示す可能性がある疾患は、肝硬変など重症肝疾患、バセドウ病など甲状腺機能亢進症、アジソン病など副腎不全、吸収不良、栄養不良、がんなど悪性腫瘍、慢性感染症、慢性炎症性疾患、Gaucher病、薬剤(ニコチン酸誘導体)です。
以上の多くの疾患で低LDL-C血症を示す可能性がありますが、原疾患がある程度進行した状態であり、それに伴う症状や検査異常がある場合がほとんどです。体調不良や症状がなく、極端なダイエット・偏食もなくLDL-Cが低値の場合は原発性低LDL-C血症が疑われます。
原発性低LDL-C血症を示す疾患は、無βリポ蛋白血症、家族性低βリポ蛋白血症、カイロミクロン停滞病、Smith-Lemli-Opitz症候群がありますが、家族性低βリポ蛋白血症以外は本邦では非常に稀で、発育障害や奇形の合併などを伴い、乳幼児期に発症します。成人で症状がなく、健康診断でたまたまLDL-C低値が指摘される場合は、ほとんど家族性低βリポ蛋白血症です。
家族性低βリポ蛋白血症は、常染色体優性遺伝で、通常LDL-Cは80mg/dL未満です。両親のどちらかに低LDL-C血症があるヘテロ接合体の方は500〜1000人に1人と高頻度です。APOB, PCSK9, ANGPLT3という3種類の原因遺伝子が知られています。基本的には無症状ですが、過半数を占めるAPOB遺伝子の変異の場合には脂肪肝を伴うことがあります。PCSK9の変異のある方は90%近く冠動脈疾患発症リスクが低下する(心筋梗塞を起こしにくくなる)場合があるようです。
健康診断でLDL-C低値が指摘され、両親どちらかあるいは兄弟に低LDL-Cの方がいた場合は家族性低βリポ蛋白血症で、脂肪肝がなければ特に治療も不要です。高度の脂肪肝がある場合は、肥満の是正や脂肪の摂取制限が必要な場合があります。
健康診断でLDL-C低値が指摘され外来受診された場合は、まずは続発性低LDL-C血症の原因となる疾病の可能性がないか、該当がなければ原発性低LDL-C血症を疑って近縁の血縁の方にLDL-C低値の方がいないか、腹部超音波で脂肪肝の有無、肝機能障害がないかを確認します。
MSDマニュアルによると、低脂血症は、血液中の脂質濃度が異常に低下した状態(総コレステロール120mg/dL未満、またはLDLコレステロール50mg/dL未満)です。
私がこれまで経験した低LDLコレステロール血症は、アルコール性肝障害による2次的なものとここに書かれている家族性低βリポ蛋白血症がほとんどだと思います。アルコール性の場合は、血中の中性脂肪が異常高値を示すことが多いです。
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