高度肥満による2型糖尿病には外科手術が有効

代謝改善手術、2型糖尿病で長期効果が明らかに/Lancet
薬物治療に反応しない、というかどうしても食欲が抑えきれない肥満による2型糖尿病の場合は、手術が必要かもという論文の紹介。以下は、抜粋です。


2型糖尿病患者の長期管理において、代謝改善手術(metabolic surgery)は従来の内科的治療と比較して、10年時の糖尿病寛解率が高く、糖尿病関連合併症も少ないことが、イタリアのGeltrude Mingrone氏らの検討で示された。これまでは、2型糖尿病への代謝改善手術の無作為化対照比較試験で、5年を超えるデータは得られていなかった。

本研究は、2型糖尿病患者の管理において、代謝改善手術と内科的治療+生活様式への介入の有用性を比較する単施設(イタリア、ローマ市の3次病院)の非盲検無作為化対照比較試験であり、今回は10年間のフォローアップの結果が報告された。

対象は、年齢30~60歳、BMI≧35で、5年以上持続する2型糖尿病が認められ、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値≧7.0%の患者であった。被験者は、内科的治療、腹腔鏡下Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)、開胸的胆膵路転換術(BPD)を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。

主要エンドポイントは、2年の時点での糖尿病寛解(HbA1c<6.5%、空腹時血糖値<5.55mmol/L、継続的な薬物療法を1年以上受けていない)とされた。10年の時点での糖尿病寛解の持続性を解析した。

2009年4月30日~2011年10月31日の期間に60例が登録され、3つの群に20例ずつが割り付けられた。平均年齢は、内科的治療群43.5歳、BPD群43.6歳、RYGB群43.9歳、女性がそれぞれ50.0%、50.0%、60.0%であった。平均BMIは、44.6、44.4、44.2、HbA1cは8.5%、8.9%、8.6%だった。

57例(95.0%)が10年のフォローアップを終了した。解析には58例(内科的治療群18例、BPD群20例、RYGB群20例)が含まれた。

外科的治療を受けた患者40例のうち、15例(37.5%)が10年を通じて糖尿病寛解を維持していた。ITT集団における10年寛解率は、内科的治療群が5.5%、BPD群は50.0%、RYGB群は25.0%であった。また、BPD群およびRYGB群は、内科的治療群に比べ糖尿病関連合併症が少なかった。

重篤な有害事象の頻度はBPD群で高かった(BPD群の内科的治療群に対するオッズ比は2.7、RYGB群は0.7だった。

著者は、「代謝改善手術を受けた患者の3分の1以上が米国糖尿病学会の糖尿病治癒の定義(薬物療法を必要とせずに高血糖の寛解が5年以上持続)を満たした。これは、2型糖尿病は治癒可能な疾患であること示している」とし、「臨床医と施策立案者は、肥満および2型糖尿病患者の管理において、代謝改善手術が適切に考慮されるようにすべきだろう」と指摘している。


日本でも、BMIが35以上の高度肥満で、半年以上の内科治療でも改善効果がない場合は、保険治療で上の論文と同様の外科的な治療を受けることができます。以下は、関西医大で行われている腹腔鏡下スリーブ状胃切除とよばれる保険が適応される手術の説明図です(HPをみる)。胃の80%ほどを切除し、残す部分は約100㏄とバナナ1本程度の大きさになり、食事の摂取量を制限するだけでなく、食欲を刺激するホルモン「グレリン」を分泌する場所も切除するために、食欲を低下させる効果も期待できるそうです。

高度肥満症に対する外科的治療の保険適応は以下の通りです(参考サイトをみる)。


肥満症に対して6ヶ月以上の内科的治療を受けても十分な効果が得られない、年齢が65歳以下、BMIが35以上の高度肥満があり、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のうち、いずれかの肥満関連合併症を有している方。
※BMI:Body Mass Index 体重[kg] ÷ ( 身長[m] × 身長[m] )で算出された値


BMIが35未満の中途半端な肥満のヒトは頑張ってダイエットしてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました