新型コロナのオーバーシュート(感染者の爆発的増加)を起こさないために我々にできることは?
以下は、記事の抜粋です。
3月19日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が開かれ、「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」が出され、以下のように報道されています。
「現状は何とか持ちこたえており、拡大防止の取り組み強化が必要だとする一方、感染が確認されていない地域では学校活動や屋外スポーツなどの再開も奨励した。政府は、臨時休校などの自粛要請の一部を解除する方針だ。」
これを読むと、一見「対策は上手くいっていて、自粛も解禁して良いんだな」と思ってしまわれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この専門家会議のメッセージは「自粛解禁OK」ではありません!
新型コロナ患者が報告されていない、あるいは報告数の少ない地域についてはリスクの低い活動から徐々に解除することを検討となっていますが、患者数が増加している地域についてはより一層の警戒が必要、というのが専門家会議のメッセージです。
オーバーシュート(感染者の爆発的増加)を起こさないために我々にできることを再確認しましょう。
都市部ではジワジワと患者数が増加している
確かに日本での新型コロナ患者の数は欧米諸国と比べると増加のペースは緩やかですが、都市部では確実に増加してきています。東京都だけでなく大阪府、兵庫県、愛知県などではジワジワと患者数が増えてきています。
実際に都内で診療していても、2週間前と比べると明らかに陽性患者の数が増えていることを実感しており、実に不気味な気配を感じます。
クラスターから流行が広がっている
新型コロナ患者の8割は誰にも感染させていません。感染を広げているのは残り2割の患者であり、この2割の感染者が広げた環境は多くが「密閉・密集・密接」の3要素を持つ空間(3密空間)であったことも分かっています。このような「3密空間」にいる感染者は、いない感染者よりも18.7倍も他の人へ感染させやすいとのことです。
逆に「3密空間」にいない8割の感染者からはほとんど感染は広がっておらず、感染の連鎖は勝手に途切れていきます。とにかく「3密空間」が感染拡大の大きな原因です。
日本でこれまで欧米諸国よりも流行が広がっていないのは、もちろん国民の皆さまが手洗い・咳エチケットなどの感染予防を徹底したおかげもあるでしょう。しかし、大規模なクラスターであるメガクラスターが発生していないことや、クラスターから生じた感染者が別のクラスターを生み出すクラスターの連鎖が起こっていないことが大きな要因の一つと考えられます。
イタリア、スペイン、アメリカなどでも一部の地域で集中的に指数関数的に患者数が増加しており、メガクラスターの発生やクラスター連鎖が起こっているものと考えられます。
このようなメガクラスターが発生してしまえば、日本もあっという間に症例数が爆発的に増えてしまい、本来必要な医師や人工呼吸器の数を超えることで十分な医療が受けられない患者さんが多く出てしまいます。また日本国内で患者数が爆発的に増加してしまえば、武漢市やニューヨーク市などのようにロックダウン(都市閉鎖)を行わざるを得なくなるでしょう。
オーバーシュート(感染者の爆発的増加)を起こさないために我々にできることは?オーバーシュート(感染者の爆発的増加)を起こさないためには、とにかく「3密空間」を避けることが大事になります。これまでのクラスターの事例では若い方はあまり多くありませんが、これは若年者が軽症例が多いためクラスターの検知が困難であると考えられています。見つかりにくいがゆえに気づかないうちに感染を広げてしまう危険性があります。
老若男女、全ての人が「3密空間」を避けることが新型コロナ対策では重要です。逆に、この「3密を満たさない空間」では感染伝播は比較的起こりにくいと考えられます。
飲食店でも常に窓を開けて換気を良くし席の間隔を広くするなど「3密空間」を避けることでクラスター発生のリスクを下げることができます。
都市閉鎖という大きな犠牲を払って感染を抑え込んだ武漢市と違い、社会の機能をなんとか維持しつつ感染者を抑え込むことができれば、日本は新型コロナ対策のモデルとして世界中から参考にされることでしょう。
日々大変な状況が続いていますが、みんなで協力してこの難局を乗り切っていきましょう。
先日、上の3条件をすべて満たしていると思われるK-1イベントに対する埼玉県など行政の自粛要請を無視して、マスクや手指の消毒などをすることで主催者がイベントを強行したことが話題になりました。このイベント強行については、マスメディアもかなり批判的な報道をしていましたが、既に実施されてしまったので、むしろ貴重な実験だととらえるべきだと思います。
このイベントに参加した約6500人の客にはすべて住所氏名を書くようにしたそうですので、関係者から何人の感染者が出るか、出た場合はどういう状況で感染したかなどを調べることができるはずです。このような調査を行うことで、まだまだ分からない新型コロナウイルスについての貴重なデータが得られると思います。
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