HIV感染防ぐ膣用ジェルの開発に大きな進展

HIV感染防ぐ膣用ジェルの開発に大きな進展、米科学誌

以下は、記事の抜粋です。


エイズウイルス(HIV)への感染を防ぐ膣用ジェルの開発が大きく進展している。これによって、エイズウイルスの感染率が非常に高いアフリカの女性たちに大きな恩恵がもたらされると見られている。米科学誌サイエンス上で7月19日、発表された。

研究者らによると、膣用ジェルの試作品は南アフリカで臨床試験が行われ、エイズウイルスへの感染が39%減少したという。特に、継続的に使用していた女性たちのグループでは54%減少したという。

研究を主導した1人、Salim Abdool Karim氏は、「ジェルがなければ、1年間に感染する女性は10名だが、ジェルを使うことによって6名にまで減少する」と語った。

ジェルには、テノフォビル(Tenofovir)が1%含まれている。これは、免疫細胞内におけるエイズウイルスの繁殖を防ぐ薬剤成分である。

臨床試験はおよそ3年以上にわたって、非感染者445人に対して行われた。また、444人に対してプラセボが使用された。試験対象者は1か月ごとに訪問検査を受けた。同時に、安全な性行為に関するカウンセリングやコンドームの配付、性感染症の治療などが行われた。


元論文のタイトルは、”Effectiveness and Safety of Tenofovir Gel, an Antiretroviral Microbicide, for the Prevention of HIV Infection in Women”です(論文をみる)。full text (PDF file)にfree accessできます。以下は、論文要約の抜粋です。


CAPRISA 004臨床試験は、1%テノフォビル(tenofovir、逆転写酵素阻害薬)膣用ゲル剤が女性のHIV感染予防に有効かつ安全であることを確認した。

二重盲検ランダム化プラセボ対象臨床試験が、テノフォビル・ゲル(n = 445)とプラセボ・ゲル(n = 444)を用いて、性的にアクティブでHIVに感染していない18-40歳の女性を対象に、南アフリカのKwaZulu-Natal地区の都市部と農村部で行われた。

HIV血清反応、安全性(副作用)、性行動、ゲルとコンドームの使用が1ヶ月に1度、30ヶ月に渡って調べられた。

その結果、テノフォビル・ゲル群では1年でのHIV感染が100人中5.6人(38/680.6 women-years)で、プラセボ群では100人中9.1人(60/660.7 women-years)だった。ゲル使用頻度が高い(>80%)被験者群では感染率が54%低下し、中間群(50 to 80%)と低い群(<50%)ではそれぞれ38%と28%低下した。テノフォビル・ゲル群全体では39%の低下だった。

副作用や有害事象の増加は認められなかった。また、感染者が有しているウイルス量やテノフォビル耐性に変化は認められなかった。

テノフォビル・ゲルは、HIV予防において、現在の予防法では不十分な部分、特に信頼できるパートナーを獲得できない女性やコンドーム使用ができない女性に有益だと思われる。


テノフォビルはアデノシン類似の構造を持つ逆転写酵素活性阻害薬で、レトロウィルスの増殖を抑制します。動物実験でもHIV予防効果が確認されていました。

今回は、”BAT24″という使い方が推奨されました。即ち、”Women were requested to insert one dose of gel within 12 hours before sex and a second dose of gel as soon as possible within 12 hours after sex and no more than two doses of gel in a 24-hour period.”です。

最初に対象となった2160人中536人がHIVポジティブのために試験から除外されました。このような状況を考えると、今回のテノフォビル・ゲルが有効だという結果は非常に良いニュースだといえます。

以下の表は、対象の889人を農村部611人と都市部の278人、テノフォビル群445人とプラセボ群444人に分けて、その生活状況を示しています。農村部女性がより若く、貧しく、結婚率が高く、セックスパートナー数が少なく、セックス回数が少なく、コンドーム使用頻度が低いことがわかります。

Rural Urban Tenofovir Placebo
Number 611 278 445 444
Mean Age (years) 23.3 25.1 24.2 23.6
Monthly income <R1000 86.1% 69.1% 81.1% 80.4%
Married 6.5% 3.6% 5.8% 5.4%
Stable partner 77.0% 93.1% 87.6% 88.5%
Mean age sexual debut 17.3 17.7 17.4 17.4
Mean number sexual partners (lifetime) 2.1 6.0 3.0 3.6
Mean age of oldest partner (past 30 days) 26.4 29.6 27.7 27.1
Reported sex in the past 7 days 58.9% 68.3% 63.6% 60.1%
Always use condom during sex 22.9% 42.8% 28.8% 29.5%
New partner (past 30 days) 0.5% 2.5% 1.3% 0.9%
Anal sex (past 30 days) 0.5% 0.4% 0.4% 0.5%

最近発表された日本人の平均寿命は、男性が79.59歳、女性は86.44歳でしたが、アフリカの多くの国では40歳台です。サッカーワールドカップは、良いタイミングで開催されました。これを機会に経済発展と公衆衛生の改善を進め、アフリカの人々自身の手でHIV感染を激減させてほしいと思います。

臨床試験に用いられたtenofovir gel

コメント

タイトルとURLをコピーしました