以下は、記事の抜粋です。
関節リウマチや多発性硬化症などの原因となる“悪玉”免疫細胞を作る遺伝子を、東医歯大などのチームが突き止めた。この遺伝子の働きを抑えれば、関節リウマチなどの新しい治療法になると期待される。
免疫細胞は通常、ウイルスなど体内に侵入した異物を探知して攻撃するが、悪玉細胞は自分自身の体も攻撃。神経細胞が傷つけば多発性硬化症、骨なら関節リウマチを引き起こす。
同大の岡本助教らは、関節リウマチ患者の悪玉細胞で「IカッパーBゼータ」という遺伝子が働いているのを発見。マウスでこの遺伝子を働かないようにすると、悪玉細胞の数が通常の5分の1以下に減り、多発性硬化症を起こす薬剤を注射しても発症しなかった。
関節リウマチは国内に約70万人、多発性硬化症は約1万2000人の患者がいる。同大の高柳教授は「IカッパーBゼータを狙い撃ちする薬を開発できれば、副作用が少ない治療法になる」と話している。
元論文のタイトルは、”IκBζ regulates TH17 development by cooperating with ROR nuclear receptors.(IκBζは、核内受容体RORと協同してTH17細胞への分化を制御する)”です(論文をみる)。
IκBζは、NF-κBと相互作用する核タンパク質です。マクロファージのToll-like receptor (TLR)刺激によって発現が誘導されるIκBζは、 インターロイキン(IL)-6などの2次反応遺伝子グループの誘導に必須で、自然免疫系での重要性は明らかにされていましたが、他の細胞系での役割は不明でした。
一方、IL-17を産生するヘルパーT細胞(TH17)は、各種の自己免疫疾患において病態形成に関与する「悪玉」細胞だとされていました。
IL-6とtransforming growth factor-β (TGF-β)は、TH0をTH17に分化させます。この分化誘導過程には、核内受容体、RORγtとRORαが必要です。しかし、IL-6とTGF-βの刺激がないと、RORγtとRORαを過剰発現しても、IL-17はわずかしか産生されません。
研究者らは、TH17への分化誘導に必須の転写因子として、IκBζを同定しました。つまり、RORγtとRORαに加えてIκBζを過剰発現すると、IL-6とTGF-βがなくてもTH17が強力に分化誘導されました。
さらに、IκBζ遺伝子ノックアウトマウスでは、TH17への分化障害があり、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)が発症しにくくなりました。IκBζは、RORγtとRORαと協同して、IL-17のプロモーター領域に結合し、転写を活性化することも明らかになりました。
これらの結果は、TH17への分化誘導において、IκBζが重要な役割をはたすことを強く示唆しています。また、TH17は、関節リウマチの病態形成に関与すると考えられています。
しかし、上の記事での「関節リウマチの原因遺伝子」という記載は、論文のどこにもありません。「骨なら関節リウマチを引き起こす」という記載も誤りです。
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