難治性多発性骨髄腫に対してもCAR-T細胞療法が有効な可能性

再発または難治性多発性骨髄腫における抗BCMA CAR T細胞療法bb2121

以下は、論文の要約です。


[背景] 前臨床試験は、B細胞成熟抗原(B-cell maturation antigen、BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法(bb2121)が多発性骨髄腫の治療に有効である可能性が示唆されていた。

[方法] 本第I相試験では、再発あるいは難治性多発性骨髄腫患者に対して、用量漸増期にはbb2121をCAR-T細胞数として50×106個、150×106個、450×106個または800×106個を、用量拡大期には150×106個、450×106個を単回注入した。プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者が試験対象として選ばれた。

[結果] 33例の患者について報告された。Grade3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは血液毒性で、発現率は好中球減少症85%、白血球減少症58%、貧血45%、血小板減少症45%であった。25例(76%)にサイトカイン放出症候群が認められ、Grade1/2が23例(70%)、Grade3が2例(6%)であった。神経毒性は14例(42%)に発現し、うち13例(39%)はGrade1/2で、1例(3%)は可逆的なGrade4であった。

奏効率は85%で、完全奏効は15例(45%)であった。完全奏効が得られた15例のうち6例は再発した。無増悪生存期間中央値は、11.8ヵ月であった。CAR-T細胞の増加は、奏効と関連しており、注入1年後まで持続していることが確認された。


まだ第1相ですが、多発性骨髄腫に対してもCAR-T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認されました。

関連記事で紹介したように、CAR-T細胞療法は、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19 陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して5月22日から保険適用になり、その薬価が3,349万円であることが話題になったばかりです。厚労省は治療対象者が最大で年間216人、販売額は年間72億円規模と予測して、高額ではあるけれども保険財政を圧迫しないと説明しているようです。

しかし、CAR-T細胞療法は、理論的にはT細胞が到達できる癌であれば効果があるはずで、固型がんでない血球系のがんなどに対しては上の論文のように治験が進んでいます。多発性骨髄腫による日本での総死亡者数は、2014年は男性2,203 人、女性1,982 人、全体では4,185人です。CAR-T細胞療法の保険適用が拡大し、iPS細胞なども臨床応用された場合、保険財政はどうなるのでしょう?

関連記事
がん治療薬「キムリア」、保険適用へ 薬価3349万円

コメント

タイトルとURLをコピーしました