バカマツタケ

株価を急騰させたバカマツタケ栽培成功は、常識破りの大発明だ
以下は、記事の抜粋です。


肥料メーカーの多木化学(兵庫県加古川市)の株価が、10月5日急騰した。急騰の理由は、バカマツタケの完全人工栽培に成功したと前日に発表したから。

バカマツタケはマツタケの近縁種。名前が名前だけに、マツタケより劣るように思いがちだが、実は姿もよく似ているうえに味と香りはこちらの方が美味しくて強いと言われるキノコである。あまり見つからないのでマイナーなキノコ扱いでほとんど市場に出回っていない。

実は昨年には奈良県森林技術センターが、人工培養の菌を自然にある樹木に植え付けて発生させることに成功している。これがバカマツタケ栽培の第1号で、今年も継続発生させて実用化に一歩近づけた。ところが多木化学は、これとはまったく違う手法をとったのである。

というのは、木クズなどによる人工培地(菌床)で培養から生育までを室内環境で完結させたのだ。これは画期的なことで、キノコ栽培の常識を覆す大発明かもしれない。

なぜならすでに栽培に成功しているシイタケやエノキタケ、ナメコ、ブナシメジなどは、朽ちた樹木など生きていない有機物素材を栄養源とする腐生菌類である。だから菌床栽培は比較的簡単だった。しかしマツタケ類などは菌根菌類と呼ぶ生きた植物と共生するキノコ。菌糸を植物の根に伸ばして栄養を交換する。それだけに人工的な栽培は難しいと考えられてきた。

とくにマツタケ類は、植物との共生が必須と考えられてきた。これまでマツタケ菌糸の培養に成功した例はいくつかあるが、子実体(傘のある姿のキノコ)を出すことに成功していなかった。だが多木化学は、とうとう菌糸から子実体を出させるシグナルを見つけたのである。この研究成果は、これまでの定説を破るものであり、学術上も大きな成果だろう。

多木化学は2012年からバカマツタケの完全人工栽培に着手。今年4月に完全人工栽培の成功を確認した。得られたバカマツタケのサイズは、長さ約9センチ、重さ36グラムで、天然ものよりやや大きかった。栽培期間は約3カ月。遺伝子チェックもしており、バカマツタケで間違いない。その後も次々と発生して、現時点で計14本になったという。

菌床栽培なら、植物と共生させないので培養期間が短く、室内の環境を調整することで季節を問わず生産できる。また室内栽培だから虫の被害にあわず収穫時も混入の心配がない、収穫も簡単……などのメリットがある。同社は特許を申請中で、3年後の実用化を目指すとされる。

菌根菌のキノコの中には、マツタケ類だけでなく、トリュフやポルチーニ、ホンシメジ、タマゴタケなど高級キノコが多い。今回の成功が、これらの人工栽培技術にもつながるかもしれない。……と考えていると、やっぱり株価は上がりそうだな。

バカマツタケの栽培が軌道に乗って販売が広がれば、本家マツタケの方が「バカマツタケに似たキノコ」として異端扱いされる時代が来るかもしれない。


本家マツタケ危うし? バカマツタケの栽培成功(ペイレスイメージズ/アフロ)


「バカマツタケ」はハラタケ目キシメジ科のキノコで、これが正式和名です。学名もTricholoma bakamatsutakeだそうです。松林ではなく雑木林に生えることや、発生時期が早いので「バカなマツタケ」という名前がついたそうです。

多木化学や奈良県森林技術センターが競って人工栽培に取り組んでいる状況をみれば、近い将来、エリンギ並みの値段でバカマツタケが味分けるようになるかもしれません。

 

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