抗インフル薬ゾフルーザの高リスク患者に対する第Ⅲ相臨床試験(CAPSTONE-2)の結果

抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ高リスク患者にも良好な成績(CAPSTONE-2)
以下は、記事の抜粋です。


塩野義製薬は、重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象としたバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の第III相臨床試験(CAPSTONE-2)において、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復するまでの時間)がプラセボに対する優越性を示し、本試験の主要目的を達成したと発表。

また、主要副次評価項目である抗ウイルス効果(ウイルス排出期間の短縮や体内ウイルス量の減少効果など)においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示した。さらに、インフルエンザ関連合併症の発現率をプラセボに対して有意に低下させた。一方,本試験での本薬の忍容性は良好であり、安全性について懸念は示されなかった。

バロキサビル マルボキシルは、新しい作用機序であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、これによりインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。すでに実施した、重症化および合併症のリスク要因をもたないインフルエンザ患者を対象とした第III相臨床試験(CAPSTONE-1)においても、インフルエンザ罹病期間がプラセボに対して有意に短縮し、抗ウイルス効果においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示している。

同薬は、2018年2月23日に日本国内で製造販売承認を取得し、成人および小児におけるA型およびB型インフルエンザウイルス感染症を対象に販売されている。米国では、2018年4月24 日に、12歳以上の急性の合併症のないインフルエンザウイルス感染症を適応症として、米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請を行い、受理されている。


本ブログでは、インフル新薬「ゾフルーザ®(バロキサビル マルボキシル)」について常に慎重な評価をしてきましたが、上の記事のように、効果は確かなようです。しかし、何度も書いているように、通常のインフル感染に対して特にこの新薬を使うべき理由はありません。

何度も書いていますが、インフルエンザは、健康なヒトであれば、薬を飲まなくてもほとんどが自然治癒します。服薬しない場合、寒気や頭痛などで始まり、38度から40度の発熱、関節痛、筋肉痛、喉の痛みなどが出現します。発熱は3~4日ほど続き、ほぼ1週間で症状は回復します。データによると、羅病期間は偽薬服用で93.3時間(73.2-106)、タミフル服用で70時間(53.8-85.9)です。ゾフルーザ®を飲んでも同じです。症状が出る期間が1日少なくなるだけです。ゾフルーザ®の服用でウイルスが増えなければ免疫もできにくい可能性があります。薬を飲んでも飲まなくても、登校には「解熱後2日が経過していること、かつ発症後5日を経過していること」という条件は同じです。

ゾフルーザ®の臨床試験では、症状発現から 48 時間以内の患者を対象に試験を実施しており、48 時間を経過した患者における有効性を裏付けるデータは得られていません(データをみる)。これを周知しておかないと、乱用につながる可能性があります。

ゾフルーザの過剰宣伝がワクチン接種率の低下を招く恐れがあります。感染症対策はあくまで、手洗いやワクチンによる予防が基本です。

タミフルのようにジャンジャン使えば、ゾフルーザにも耐性ウイルスが出現する可能性が高いです。風邪に対する抗生物質の使用には非常にうるさい行政が、あまりにこの「日本発の新薬」には甘いので、耐性ウイルスの出現や薬害も日本が最初になるような気がします。

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