「第2世代」アルツハイマー病抗体薬

アルツハイマー病治療薬の最前線、「トロイの木馬」「弁慶の泣き所」で攻める!
以下は、記事の抜粋です。


アルツハイマー病抗体薬は「第2世代」へ
レカネマブとドナネマブの2つの抗アミロイドβ抗体薬の流通が広まり、その評価も定まりつつある。こうした既存薬の第1世代から第2世代に移ってきたかと思わせる治験段階の新薬がある。今回はそのうちの2剤を紹介する。

まず、これまでに開発された抗アミロイドβ抗体薬と抗タウ抗体薬について指摘されてきた弱点をまとめる。
(1)抗体薬は分子量が大きいので血液脳関門(BBB)の突破効率が低く、脳実質への移行効率がよくない。
(2)アミロイドもタウも播種(seeding)によって病変が広がるが、とくにタウではその広がりの源泉を叩ける薬がなかった。
(3)タウにはいくつものタイプがあり、細胞内外に存在するのだが、その一部だけを治療標的にしていた。

今回紹介する2剤は、これらの弱点を克服しようとするものである。(1)のBBB通過という課題には正面突破を図るtrontinemab(トロンチネマブ)、(2)の病変拡大に対しては悪の源泉を断ち切るetalanetug(エタラネツグ)が対応する。

BBB正面突破のtrontinemab
trontinemabは、現在は開発が中止されたgantenerumabに、ブレインシャトルというBBBを通過する技術を結合させた改変型抗体である。gantenerumab単体では脳内への移行効率が約0.1%と非常に低く、臨床試験で主要評価項目を達成できなかった。

そこで移行効率を高めるため、以下のメカニズムによって改変された。脳に必要な鉄分などを取り込むため、血管内皮細胞にはトランスフェリン受容体1(TfR1)が発現している。ブレインシャトルとは、この受容体を「BBB突破の運び屋」として利用する技術だ。trontinemabは、アミロイドβに結合する抗体の末端にTfR1に特異的に結合するシャトルモジュールを載せている。本剤が血管内のTfR1に結合すると、毛細血管内皮細胞の膜が内側に落ち込み、抗体を取り込んだ小胞が細胞内にできる。小胞は血管内皮細胞の中を移動して侵入口とは反対側の脳実質の細胞膜に融合する。すると受容体から分離したtrontinemabが脳実質側へ放出される仕組みだ。

治験成績では、投与開始から約6ヵ月で9割以上の患者でアミロイドが画像上ほぼ完全除去された。なお、この効果を得るのに従来薬なら1~1.5年を要した。認知機能に関する詳細なデータは未発表である。またARIA-Eの出現率は1%台~5%未満と従来薬より1桁低い。反面、懸念されるのは脳以外の全身にあるTfR標的化による貧血や溶血といった副作用である。

「弁慶の泣き所」を突いて伝染源切断のetalanetug
近年、多くの抗タウ抗体薬が開発されてきたが、それらはうまくいかなかった。その主因はタウのN末端を標的にしており、凝集の中心であるMTBR(微小管結合領域:Microtubule-Binding Region)を標的にしていなかったことだとされる。

タウタンパク質における播種の起点となる部位は、MTBRに存在する2つの短い6アミノ酸配列だ。

etalanetugはこのMTBRを狙い撃ちする抗体医薬で、脳内で病的なタウ病理を拡散させる「タウ伝播種」に特異的に結合し、他細胞への広がりを阻止・除去する。最新の知見では、3種類の家族性/顕性遺伝性アルツハイマー病の遺伝子を有する者(発症前も発症後も)を対象に、抗アミロイドβ抗体薬レカネマブをバックグラウンド投与し、抗タウ抗体薬etalanetugが上乗せ投与された。その結果、MTBR-tau243やp-tau217などタウ凝集バイオマーカーの低下が脳脊髄液と血液中で確認され、タウPETでも脳内タウ蓄積の増加抑制、減少傾向が観察された。なお、患者数の多い「孤発性の早期アルツハイマー病(MCI・軽度認知症)」を対象としたグローバル第II相臨床試験(Study 202)も並行して進められている。しかし、記憶をはじめ認知機能における臨床効果の立証は、現段階ではなされていない。


どちらの薬も認知機能への効果が報告されていません。特に、trontinemabのアミロイドをほぼ完全に除去したという結果を考えると、これで認知症に効果がなければ超大ニュースです。

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