イカナゴは壊滅的に獲れなくなった…日本の魚を減らした“真犯人”の正体
以下は、記事の抜粋です。
魚が消えていく本当の理由を社会が取り違えると、効果の薄い対策が打たれ続けます。効果が出ないので、さらに魚が減っていく。この悪循環が、イカナゴを含むサバやサケをはじめ、日本の魚種の大半で起きています。
かつては春の風物詩でもあったイカナゴ(コウナゴ)。そのイカナゴが各地で消えています。陸奥湾、伊勢・三河湾、仙台湾、福島沖、北海道、大阪湾、播磨灘。ピークの1974年には全国で30万トン漁獲されていたイカナゴは、2024年にはわずか200トンまで落ち込み、壊滅的な状況です。
■乱獲による資源崩壊が起きてからでは遅い
イカナゴは、くぎ煮でなどで親しまれてきましたが、原料の価格が高騰するだけでなく、そもそも作るための原料そのものがない事態になっています。科学的根拠に基づく資源管理制度がまったく機能していないため、今後も良くなる見通しはありません。今年は瀬戸内海の播磨灘で3月17日に解禁されたものの、わずか2日間で終了しています。
イカナゴが激減した理由に関しては、海水温上昇、水がきれいになりすぎたなど、さまざまな説明がされています。しかし、生まれたばかりのイカナゴを漁獲枠なしで獲り続けている「成長乱獲」が根本的な原因なのですが、漁業の影響を避けて研究者の方々が減った理由を説明するので、視野を世界に広げて分析するとあまりにも異なる実態が浮き彫りになります。
■日本と大西洋のイカナゴの漁獲量推移を比較
1970年ごろは年間20万〜30万トンもの漁獲量がありましたが、減り続けて2024年はついに200トンと、その1000分の1に激減しています。
世界に目を向けると異なる実態があります。イカナゴは、EUやノルウェーなどでも漁獲されています。しかし、漁獲量は、日本と対照的に減っていないのです。少なくとも「イカナゴはどこでも同じように減っている」という見方はできないことがわかります。
詳しく解説すると、上記の漁獲量は、大西洋でイカナゴを漁獲している海域を6つに分けた合計になっています。海域によっては禁漁している海域もあります。ノルウェーでは昨年(2025年)は、予防的措置を適用して禁漁しました。
実際には、ノルウェー海域でも漁獲しようと思えば漁獲はできます。しかしながら、ノルウェーのイカナゴ漁は国際的な水産エコラベルである「MSC漁業認証」を取得しており、無理はしません。資源が十分に回復したのちに、再び漁が開始されます。
日本のように資源を根絶やしにしてから神頼みするのとはわけが違うのです。さらに付け加えると、イカナゴはほかの魚やクジラなどのエサになる魚です。漁獲枠の設定に際しては、生物多様性を十分に考慮して数量が設定されます。昨年末のスルメイカで起きた漁期途中の度重なる増枠のように、人間の都合だけで漁業を考えることはありません。
■日本全体の視点でイカナゴが減った理由を考える
①海水温上昇、②水がきれいすぎる、③他の捕食者が増えたから、といった理由の矛盾点を見ていきます。
①海水温上昇……イカナゴが減ったのは瀬戸内海だけではありません。陸奥湾が2013年、伊勢・三河湾が2016年、福島沖が2019年、仙台湾が2019年、北海道の宗谷海峡が2023年、そして播磨灘・大阪湾が2024年に減っています。
②水がきれいになりすぎたから……エサになるプランクトンが減れば、資源に影響が出ることはあり得ます。ただ、それが主因だとすると、室町・江戸、もしくはそれ以前の時代にはイカナゴは少なかったのでしょうか。また、瀬戸内海だけでなく、同じくイカナゴが消えた陸奥湾、伊勢・三河湾、福島沖、仙台湾も同様に、水がきれいになりすぎたことだけで説明できるのでしょうか。
③他の捕食者が増えたから……イカナゴは特定の魚種だけではなく、大半の魚種のエサになっている魚です。捕食者の増加が主因だとすれば、ほぼ全魚種の資源減少が著しい上記の他の海域で減った理由はどうなるのでしょうか。
■完全養殖や稚魚放流は解決にならない
天然の水産物を漁獲する漁業とはコスト事情が大きく異なるので、刺身などの高単価向けの供給にしかなりません。
皆さんが普段食べている塩干品などの加工品は、大量にに魚が漁獲され、魚価が安かった原料をベースに加工されてきました。一方で養殖物に関しては、設備投資やエサ代など、漁業で漁獲される水産物とはコストが大きく異なるため、高くなってしまうのです。
天然の水産物を科学的根拠に基づいて資源管理し、持続可能にしていくことが、どの手段よりも安価で長続きするのです。
■イカナゴ資源回復に必要なのは「禁漁」
イカナゴの資源を回復させるために必要なのは「禁漁」です。すでに一部の海域で起きているように、獲り尽くしてしまって何年たっても獲れないという状態に、瀬戸内海のイカナゴ資源も近づいてしまっています。
まともな漁獲枠もなく、科学的根拠に基づく資源管理をしていなければ、こうした事態は起きます。それを他の要因に責任転嫁し続ければ、さらに地方へ、そして消費者に深刻な影響を与え続けてしまいます。
科学的根拠に基づく広い視点で、水産資源管理を見てください。
私にはイカナゴが減った本当の理由が何かわかりませんが、研究者は漁業への影響を避けているというよりも、研究資金提供先である農水省あるいは文科省あるいはその後ろにいる政治家に忖度しているのではないでしょうか?

イカナゴの成魚の通称「カマスゴ」
あと、イカナゴ(イカナゴ科イカナゴ属)は正式名ですが、関西ではイカナゴの成魚を「カマスゴ」と呼びます(写真)。私はこれが好きです。
イカナゴの「くぎ煮」を食べることは、生まれたばかりの稚魚を食べるという生態系破壊をすることだと消費者に理解してもらうことも重要だと思います。

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