理研:研究者が論文「自主(?)」点検 3000人、2万本以上にという5月8日の記事で私が「理研が使っている『悪意』の定義がよくわかりません。」と書いたことに対して、「干し柿」さんから以下のようなコメントをいただきました。
本日理研から発表された『不服申立てに関する審査の結果の報告』によれば,理研は「悪意」を法律用語としての「基礎事実を知っている」という意味で使っております。
http://www3.riken.jp/stap/j/t10document12.pdf
1ページ目で『「悪意」とは、客観的、外形的に研究不正とされる捏造、改ざん又は盗用の類型に該当する事実に対する認識をいうもの』と定義付けています。
この緩い定義だと,理研の他の研究者ばかりでなく国内の全ての研究者の中から次々と「研究不正」認定される人が出てきてしまいますね。
ネイチャー論文で不正行為が認定された遺伝子解析画像について、サイエンス誌の査読者が複数の画像を1枚にまとめる際には白線を入れて区別するよう注意していたのに、小保方氏はサイエンス誌に不採択になった後、ネイチャー誌にそのまま再投稿したことが理研調査委が悪意(=故意)の不正行為と認定する有力な根拠となりました。
しかし、サイエンスから返ってきた査読者のコメントは著者全員が読み、ネイチャーへ再投稿した原稿も全員が確認しているはずです。すなわち、どちらの論文でも著者になっていた研究者はすべて悪意(=故意)の不正行為を行ったことになります。さらに、実験ノートもろくに書けない未熟ものとされている小保方氏が再投稿作業(=不正行為)を主導していないことは明らかですので、この「不正行為」はシニアの笹井氏あるいは若山氏を中心として行われた考えるのが自然だと思います。
コメント
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先生,いつもわかりやすい解説ありがとうございます。勉強させていただいております。
「悪意」を理研のように定義すると,規程第2 条第2 項ただし書きの「ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする」が事実上の空文規定になってしまうとの批判を免れません。
そこで理研は不正行為を基礎付ける「外形的事実の認識」の認定を形式的に行うのではなく,『事前にサイエンス誌から警告があった』等の状況証拠を勘案して実質的に行うことにより,他のケースでは規程第2 条第2 項ただし書き適用により免責される余地を残したのではないかなと思っております。
しかし,これはいかにもトカゲのしっぽを早く切り捨てたいとの魂胆からの場当たり的な認定ではないかという印象が強いです。
本件は,先生がこのブログで以前から仰っているようにシニア研究者の責任が重大な事件でありますから,今後発表される小保方氏とシニア研究者の懲罰の軽重の差に注目したいと思っております。
おそらく理研はシニア研究者の「悪意」認定においては(シニア研究者に有利な)別の状況証拠を援用することにより免責もしくはより軽い懲罰で済まそうとするのではないかと思っておりますが,その場合,その状況証拠がよほど説得力のあるものでない限り,後々禍根を残すことになるだろうと思っております。