男性の性行動と報酬をつかさどる神経回路とその神経伝達物質が同定されました。

オスの性的欲求をつかさどる脳回路をマウスで特定。人間にも同様の回路が存在する可能性
以下は、記事の抜粋です。


スタンフォード大学のシャー博士らの研究チームは、マウスのオスの脳内にある性的欲求をつかさどる回路を特定した。これを刺激すると、オスがメスに興奮し、交尾をしようとすることが確認された。この脳回路を刺激すると、ただの物と交尾しようとするほどオスを興奮させたり、”賢者タイム”を40万分の1に短縮させることもできるという。

その回路は、脳の「扁桃体」にある「分界条床核(bed nucleus of the stria terminalis)」という部位から「視床下部の視索前野(preoptic hypothalamus)」に信号を送っている。

今回のオスの「性的欲求回路」では、P物質とよばれる神経伝達物質がこの回路を機能させている。この性的欲求回路を刺激すると、オスの交尾行動にスイッチが入ることが確認された。即ち、オスにP物質を注入すると、そばを通りかかったメスを執拗に求めるようになり、さらにオプトジェネティクス(光で細胞を操作する技術)で視索前野を直接刺激してやると、ただの物と交尾しようとするほど興奮したという。

この回路のダイレクトな刺激は、俗にいう”賢者タイム”を吹き飛ばしてしまう。男性諸氏ならわかるように、哺乳類のオスの多くは一度コトをすませれば、再びヤル気が回復するまでにはしばらく休憩が必要になる。マウスのオスの場合、この賢者タイムは5日ほど続くのが普通だ。ところが性的欲求回路を刺激してやると、ただちに性的欲求が回復したのである。交尾再開までに必要だったのはわずか1秒以下。つまり賢者タイムが40万分の1に短縮されたことになる。

この性欲回路は性欲専用のようで、この回路のスイッチを切られたオスは、交尾をしなくなるが、それ以外の悪影響は特に確認されなかった。

バイアグラなどの勃起不全治療薬は、血管を広げることで血流を促進し、それによってイチモツを元気にしてくれる。もしもマウスのような回路が人間にもあり、それを上手に刺激する薬を開発できれば、また違ったアプローチで男性を元気にしてあげられるかもしれない。シャー博士らは今後、メスのマウスの脳にも同様の回路があるかどうかを調べる予定であるそうだ。


元論文のタイトルは、”A neural circuit for male sexual behavior and reward(男性の性行動と報酬をつかさどる神経回路)”です(論文をみる)。

P物質(substance P)は11個のアミノ酸からなるペプチドで、痛覚の神経伝達物質として知られています。ヒトでは三叉神経節、内頚神経節に含まれ、血管にも広く分布します。ヒトでもマウスと同じような回路があるかどうかわかりませんが、この神経回路だけを薬で刺激したり阻害するのは難しいかもしれません。

メスに交尾を迫るオスのマウス

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