2022年のノーベル医学・生理学賞受賞は、「スウェーデン出身」で「ドイツで研究する」スヴァンテ・ペーボ博士

母子家庭の夢から生まれたノーベル賞…婚外子とその父、ノーベル審査員科学者の秘められた私生活
なかなか興味深い記事でした。ぜひ、元記事をお読みください。以下は、記事の抜粋です。


2022年のノーベル生理学医学賞はスバンテ・ペーボ博士が受賞した

今年のノーベル医学・生理学賞受賞は、「スウェーデン出身」で「ドイツで研究する」スヴァンテ・ペーボ博士に、「すでに絶滅したヒト族のゲノム、ならびに人類の進化に関する発見に対して(for his discoveries concerning the genomes of extinct hominins and human evolution)」単独受賞で与えられました。ペーボ博士はまた「沖縄科学技術大学院大学」OISTの客員も務めています。

スヴァンテ・ペーボ博士は1955年、スウェーデンのストックホルムで、生化学者のスネ・べリストローム(1916-2004)とエストニア生まれの女性生化学者、カリン・ペーボとの間に生まれました。

父親と姓が違うのは、婚外子だからで、親父のべリストロームには法的な妻もあれば同年の息子もあり、それらを養育しながら、これらの事実は死の直前まで伏せられていたようです。

ちなみに、父親の方のスネ・べリストロームはどういう人かというと、コロンビア大学などで学んだステロイドや脂質の研究者です。1947年、31歳でスウェーデンのルンド大学教授に就任、コレステロール代謝の研究から生理活性物質プロスタグランジンの機能や構造を明らかにします。

プロスタグランジンとその関連物質は重要な生理活性物質で、様々な疾病やその治療で重要な役割を果たしています。1975年、59歳のべリストロームは「ノーベル財団」のディレクターに就任し、1982年、自身もノーベル医学・生理学賞を受けました。

この間、2つの家庭を持つという、秘められたの私生活があった。彼の異母兄は2004年、88歳でべリストロームが亡くなる49歳まで、血を分けた兄弟であるペーボ博士の存在を知らされていなかったとのことでした。スヴェンテ・ペーボ少年は、生化学者の母親に育てられますが、父親は家族や世間に隠したまま、彼を多角的にサポートしていた様子がうかがわれます。

最初は、ウプサラ大学文学部で考古学やエジプト学などを学びます。詳細は分かりませんが、べリストロームのアドバイスで同大学の医学部に転学部したとされます。そして1986年に博士の学位を取得。彼が大学院生時代の1982年、父親がノーベル医学生理学賞を取っています。

ペーボ博士は、霊長類の本質を遺伝的に探る「古DNA学」という、新たな分野を築き、37歳の1992年「ライプニッツ賞」を受賞、1997年からドイツの「マックス・プランク進化人類学研究所」の遺伝学部門ディレクターに就任、「ネアンデルタール人」プロジェクトを開始することになります。

ぺーボ博士が「絶滅したヒト族」ゲノムと現生人類の徹底した比較から得る第1の結論は「人類のゲノム的な平等」にあると言わねばなりません。

ユダヤ人は、かつてドイツ人など「アーリア民族」よりも「劣った」人類であるとされ、それらを駆逐する「民族浄化」絶滅政策で、高潔なアーリア人の血を守り、人類を高めていく必要があるなどとする優生学によって、ナチスの手で計画的に民族殲滅させられかけました。

「LGBT」もナチスでは、「精神疾患」「遺伝的に劣ったことがあって同性愛になる」などと「尊厳死」の対象とされました。ペーボ博士自身、男女両性愛者であることを広く公言しています。

約100万年前に現生人類と別れたと思われる未知のヒト族霊長類「デニソワ人」の発見もペーボ博士の業績の1つです。ここ8000年程度前に灌漑農法が普及し、いまの人類文明が栄える直前、ほんの数万年前まで、「ヒト族」霊長類は、世界各地に並存していた。それら同志は交配が可能で、つまり共通の子孫としていま現在生きている我々人類がある。

そこにはゲノムの「多様性」はあるけれど、一律の「優劣」などつけることはナンセンスだし「ロシア人が血を流した歴史的にロシアの土地」であるとか「ウクライナとロシアは一体」などという誰かの作文は単に荒唐無稽、無理やりな強弁に過ぎないことは、人類史的スケールから見れば、あまりに一目瞭然です。


絶滅したネアンデルタール人が現生人類と交配していて、その痕跡が現生人類のDNAに残っているという話は知っていましたが、今回ノーベル賞を受賞したペーボ博士のことはまったく知りませんでした。ほぼ同世代の生命科学研究者が同じゲノム研究でノーベル賞を受賞したのがなんとなく嬉しいです。生まれた場所や環境を理由に他人を尊敬したり差別するヒトが世界から消えることを願います。

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