The evolution of overconfidence
以下は、論文要約の抜粋です。
自信は、仕事のパフォーマンスや精神衛生からスポーツ、ビジネス、戦闘にいたるさまざまな領域での成功において極めて重要な要素である。
ある研究者達は、自信を持っているだけではなく自信過剰(現実の自分よりも自分が優れていると信じること)であることが有利に働くと示唆している。自信過剰は、野心、やる気、決断、粘り強さ、あるいはハッタリの信憑性を増やすことに役立ち、自己遂行暗示を産む結果、誇張された自信が成功の確率を高めることが実際にある。
しかし、過剰な自信は、誤った評価、非現実的な期待、および危険な決断をもたらすこともあるので、そのような誤った信念が、正確で偏りのない信念を含む戦略との競い合いの中で、どのようにして進化したり定着したりするのかは謎のままである。
本論文で我々は、競争で得られる資源の利益が競争のコストに対して十分大きい場合、我々の直感に反して、過剰な自信が個人の適応力を最大化し、その集団は過剰な自信を持つようになるという進化モデルを提示する。
対照的に、限られた条件下でのみ、偏りのない戦略は安定である。自信過剰な集団が、多様な環境で進化的に安定であるという事実は、市場のバブル、財政の崩壊、政策の失敗、災害、さらには悲惨な戦争などが自信過剰によって起こったとしてもなお、自信過剰が巷にあふれている理由を説明するのに役立つかもしれない。
この論文についてのNEWS & VIEWSの解説によると、100万人の高校生に聞いたところ70%の学生が自分の能力は平均以上だと考えており、大学教授に至っては94%が自分の教育能力は平均以上だと考えているそうです。このような現象は、自信過剰が安定である、あるいは進化的に有利であることの結果であり、それを説明するのが本論文のモデルだそうです。
モデルは、2人の個人がその所有権を主張することもできるし、しないこともできる有価物を想定します。もしも、2人ともが所有権を主張すると戦うことになり、強い者が勝って有価物を得ますが、戦った結果、2人共に代償あるいは犠牲が生じます。もしも、片方しか主張しなければ有価物は自動的に主張した者に行きます。どちらも主張しなければ、どちらも有価物を得ません。
このような場合、お互いが相手についての完全な情報を得て争う場合は、有価物はより強いものが得るだけで終わってしまいますが、現実の場面での情報はいつも不完全です。
相手についての情報が不完全な場合、正常あるいは慎重な強者と対面しているにもかかわらず、自信過剰な弱者が有価物を得るという結果がおこります。こういうことが進化上繰り返されて自信過剰が巷にあふれるというわけです。
これからは、少しぐらい相手が強そうに見えても頑張って戦うことにしますか?問題は、「競争で得られる資源の利益が競争のコストに対して十分大きい場合」かどうかの判断が難しいことです。これは、相手が自分より強いかどうかと同じぐらい難しいようにも思えます。
自信過剰が成功した例として紹介されているMuhammad Ali(Natureより)
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