薄毛男性型脱毛症(androgenetic alopecia、AGA)の治療薬proxalutamide（プロキサルタミド）がCOVID-19治療薬になる可能性

経口アンドロゲン受容体抑制薬がCOVID-19万能薬に？
以下は、記事の抜粋です。

経口のアンドロゲン受容体抑制薬が外来と入院を問わず新型コロナウイルス（SARS-CoV-2）感染症（COVID-19）に有効なことがブラジルでの試験で裏付けられ、次は集中治療室（ICU）のCOVID-19患者にどうかが検討されます。

経口アンドロゲン受容体抑制薬がCOVID-19患者に外来と入院を問わず有効
今年1月に発表された試験でCOVID-19患者の入院を完全またはほぼ完全に防いだ経口薬proxalutamide（プロキサルタミド）が今度はCOVID-19入院患者の死亡のほとんどを防ぎました。

中国のKintor Pharmaceutical社が開発している同薬は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の細胞表面受容体ACE2結合前に下処理をする酵素TMPRSS2の発現亢進に関与するアンドロゲン受容体（AR）阻害薬です。

また、ACE2の発現抑制によりその活性を抑制する作用もあり、AR抑制とACE2抑制のどちらもがSARS-CoV-2肺細胞侵入阻止に貢献するとの背景で、proxalutamideのCOVID-19入院抑制効果を調べる試験が去年4月にブラジルで始まりました。

試験はCOVID-19患者の男性を募り、COVID-19による入院率の比較によって軽症患者の重症化予防効果を示すことを目指しました。1月10日に発表された最終解析でのproxalutamide投与群134人の入院率は0%、つまり1人も入院せずに済みました。一方、プラセボ群128人では4人に1人以上の35人（27％）が病状悪化により入院を要し、proxalutamideの重症化予防効果が示されました。同薬15日間使用に伴う有害事象は認められませんでした。

外来の女性COVID-19患者を対象にした試験の途中結果も発表され、男性での試験と同様の効果が認められています。proxalutamide治療群の女性60人の入院率は男性での試験と同様に低くてわずか1.7％であり、入院したのは1人のみでした。プラセボ群35人では6人（17%）が入院しました。

今回3月11日に新たに発表された死亡抑制効果はCOVID-19流行がとくに深刻だったブラジル北部での第III相試験に参加したCOVID-19入院男女294人の結果に基づきます。

ブラジル北部でのCOVID-19入院患者の死亡率は高く、Lancet Respiratory Medicine誌に最近発表された25万例超の解析によるとブラジル北部では半数（50％；ブラジル全体では38%）が入院中に死亡しました5）。proxalutamideの試験でもプラセボ群296人の死亡率は同様に高く、およそ2人に1人、141人（48％）が14日間に死亡しました。一方、proxalutamide群294人で死亡したのはわずか11人（4％）のみであり、同薬はCOVID-19入院患者の死亡リスクを92%減らしました。

Kintor社は外来の男性COVID-19患者を対象にした第III相試験の米国FDA許可を今月初めに得ており、最初の患者が来月4月には組み入れられます。Kintor社はCOVID-19治療低分子薬の第III相試験FDA許可を得た最初の中国製薬会社となりました8）。また、2009年発足の同社が初めてFDA許可を得た第III相試験でもあります。

スパイクタンパク質がヒトのACE2に結合するための構造変化に必要なTMPRSS2という酵素の発現はアンドロゲンによって活性化されます。proxalutamide（プロキサルタミド）は、アンドロゲン受容体を阻害することでTMPRSS2を減少させ、その結果ウイルスがACE2に結合しにくくなり感染もしにくくなるというメカニズムのようです。

アンドロゲンは、もともと男性の薄毛男性型脱毛症(androgenetic alopecia、AGA)の治療薬として開発された薬です。私も以前の記事で紹介しましたが、AGAと新型コロナウイルス感染については忽那先生が以下の記事で詳しく書かれています。薄毛のヒトはアンドロゲンが多いためにウイルスが感染しやすいという可能性について、メカニズムについても詳しく説明されています。興味のある方は是非お読みください。
薄毛の人はコロナが重症化しやすい？

上の仮説が正しいとしたら、アンドロゲン産生を抑制するフィナステリドなどのAGA治療薬はCOVID-19治療薬になるのでしょうか？