昨日に続いて、Science誌の怪しい論文についての記事です。以下は抜粋です。
NASAなどのチームが昨年12月、生命活動に必須のリンの代わりに、猛毒のヒ素を利用して生きる細菌をカリフォルニア州のモノ湖で発見したと発表したことについて、米科学誌サイエンスは5月27日、この結論に疑問を投げかける8本の論文を電子版で発表した。
いずれの論文も、「ヒ素はDNA中では不安定」「生命活動に利用しているのではなく体内に取り込んだだけ」などと問題点を指摘、実験の過程でヒ素が混入した可能性なども挙げている。
これに対し、NASAチームは反論する論文を同誌電子版に掲載。実験方法が適切だったことを詳しく説明し、「全体を考えても、やはり当初の結論が最も合理的な説明」としている。
記事には「8本の論文」とありますが、Scienceの6月3日号をみると、論文ではなく8つのTechnical Commentsとそれらに対するFelisa Wolfe-Simon氏らNASAチームからの反論(response)がありました。また、News & Analysisに”Concerns About Arsenic-Laden Bacterium Aired”という記事もありました(記事をみる)。
Technical Commentsでは、わずかにコンタミしたリンがヒ素の代わりに働いているのではないか、ヒ素を含んでいるというDNAはコンタミしているだけではないか、などのコメントがあり、これに対してFelisa Wolfe-Simon氏らNASAチームは、コンタミは非常に少なく、その可能性は低いと主張しています。
いずれにしても、これまでGFAJ-1株を使って研究をしたのはNASAチームだけですので、Science誌も結論を出したわけではなく、「これが議論の始まり」のような言い方をしています。そして、GFAJ-1株がATCCなどに寄託されたので、他の研究者にも使えるようになれば結論が出るだろうとしています。
Felisa Wolfe-Simon氏は論文を発表後、Glamour誌に特集され、Time誌から「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれました。しかし、まだPIとしての定職を得るには至っておらず、GFAJ-1株の名前の由来のように、”Give Felisa a Job”状態が続いているようです。
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