Viagra reduces MS symptoms in animals
以下は、記事の抜粋です。
多発性硬化症(Multiple sclerosis, MS)の動物モデルの症状が性機能不全治療薬バイアグラ(一般名:シルデナフィル)によって著明に改善したとスペインの研究者によって報告された。
Acta Neuropathologicaに掲載された研究は、この勃起不全治療薬として用いられている薬物を投与すると、8日後には50%の動物がほぼ完全に治癒したことを示した。
MSの発症直後にシルデナフィルが投与された場合は、脊髄白質への炎症細胞の浸潤が抑制され、神経細胞軸索への障害が減少しミエリン修復が促進されるという。
MSは、神経軸索周囲のミエリン髄鞘の欠損によっておこる。その結果、中枢神経系における神経細胞間の伝達が障害される。現在、この病気を治癒させる治療法はなく、その症状を軽減させる薬物がいくつかあるという。
MSは、脳や脊髄に自己のリンパ球などが浸潤する自己免疫疾患で、神経組織の炎症や神経細胞の軸索を絶縁している髄鞘の脱髄がおこります(MSのサイトをみる)。
関連記事に書いたように、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)アナログとして働くフィンゴリモドが新しいMS治療薬として注目されています。フィンゴリモドは、T細胞の遊走能を減弱させるので、神経組織に浸潤するリンパ球が減少し、炎症が抑制されます。また同時に、抗体を産生するB細胞の働きも抑制されます。
さて、元論文のタイトルは、”Sildenafil (Viagra) ameliorates clinical symptoms and neuropathology in a mouse model of multiple sclerosis”です(論文をみる)。
MOG(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein)は中枢神経系特異的に発現し、MS患者に抗MOG抗体が見られることや、MOG(35-55)ペプチドがMSの実験モデルとされる自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を引き起こすことが知られています。本論文でもMOG(35-55)ペプチドをマウスに投与してEAEをおこしたものをMSモデルとしています。
シルデナフィルは、cyclic nucleotide phosphodiesterase (PDE)ファミリーの中の1つでcGMPを選択的に分解するPDE5を特異的に阻害します。その結果、陰茎海綿体のcGMPを増大させ、海綿体の弛緩反応を増強し、内圧を増強して勃起させます。この実験でみられたMSモデルに対する作用も神経、グリア、その他でのcGMPの増大を介していると思われますが、そのメカニズムは不明です。
シルデナフィルは、MSによって生じる勃起不全に対して既に用いられている薬物ですので、MSそのものに対して臨床試験を行うことはそれほど難しくないと思われます。ヒトのMSにも有効であることを祈ります。
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