「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解…日本は世界トップレベルの農薬大国
なかなかショッキングな内容です。これから農業をしようと考えているヒトはもちろん、家庭の主婦・主夫の皆さんは、是非本文を全部読んでください。以下は、記事の抜粋です。
「国産が一番安全」という間違った神話
FAO(国連食糧農業機関)の統計によると、中国の農薬使用量は、農地1haあたり13kgという世界トップレベルの数値だ。だが、実は日本も11.4kgの農薬を使っており、中国とほぼ変わらない。日本も中国に劣らず、世界トップレベルの農薬大国なのだ。
実はアメリカはずっと少なく、日本の5分の1しか使っていない。ヨーロッパ諸国も日本より低く、イギリスは日本の4分の1、ドイツ3分の1、フランス3分の1、スペイン3分の1、オランダ5分の4、デンマーク10分の1、スウェーデン20分の1となっている。EUは政策により意図的に農薬を減らしている。
日本人の多くは「国産が一番安全」、そう信じていることだろう。しかし、それは間違った神話なのかもしれない。少なくとも、統計の数字だけを見るならば、日本は中国と並んで世界でも有数の農薬大国ということになる。
「鎖国」を続けた日本農業の危機
日本の農業の多くは、1970年代からまったく進歩をしていない。技術革新というものが、起きてこなかったのだ。農家の多くは、1970年代とまったく同じ農法で栽培している。昔ながらの「土づくり」を尊び、50年前と同じように肥料をあげて、同じ量だけ収穫している。
今の時代に1970年代と同じ方法でやっていけている産業など、他にあるだろうか。農業だけ、それができてしまう。なぜかというと、国際競争にさらされてこなかったからだ。
海外では驚くべき進歩を遂げている
日本の農業は、第二次世界大戦が終わった後ずっと鎖国をしてきた。コメ788%、こんにゃく芋1700%、エンドウ豆1100%に代表されるような高い関税をかけることで、海外からの農産物を閉め出してきた。加えて、作物ごとに複雑な「規格」を設定し、外国からの参入をさらに困難としてきた(非関税障壁)。
海外では、ここ30年ほどの間に農業の形が激変した。栽培法には幾度も革命が起き、そのたびに世界最先端のテクノロジーが農業と融合してきた。農業は国境を越えたグローバルビジネスとなり、カーギルなどの巨大企業が生まれ、世界の食糧をコントロールするほどの力を持つに至った。その陰で、昔ながらの農法をしてきた零細農家はつぶされ、消えていった。
日本はというと、ひたすら国内市場だけを見てきた。ずっと内向きの農業をして、平和な産地間競争に明け暮れてきた。そのような鎖国状態を今後も続けていけるのなら、それはそれでよいかもしれない。だが、現実問題として、開国せざるを得ない事態になってしまった。
「TPP」で開国せざるを得なくなった
2018年12月末、TPPが始まった。TPPとは、Trans-Pacific Partnership(環太平洋パートナーシップ)のことで、太平洋を取り囲む11カ国の間で、関税をほぼなくし、貿易を自由にできるようにしましょうという取り決めのことだ。
このTPPが発効した瞬間から、日本への農産物の輸入は大幅にジャンプした。TPP直後の2019年1~4月の輸入量は、前年と比べてブドウは41%アップ、キウィは42%、牛肉(冷凍)30%と大幅に増加している。スーパーを見ても、チリ産やオーストラリア産のブドウが大量に並ぶようになったことに気づくだろう(だいたい2~6月の季節)。
TPPとは別に、ヨーロッパとはEPAが結ばれた。EPAとはEconomic Partnership Agreement(経済連携協定)のことで、これもヨーロッパと日本の間の関税や関税以外の障壁を取り払い、貿易をより自由にしましょうという取り決めだ。これは2019年2月より発効された。そしてその影響はすぐに現れた。
EPA発効後の2019年2~4月の輸入量を前年と比べてみると、ヨーロッパからのワインが30%増加した(財務省貿易統計)。チーズは31%、豚肉は10%増加している。
国産野菜が勝てる理由が見つからない
フランス産やイタリア産は農薬の量が日本よりもずっと少ない。日本の3分の1から20分の1しかない。そして日本の物よりずっと安い。おいしさはほぼ変わらない。となると、みなさんはどちらを選ぶだろうか。「おいしいけど、値段が高くて、農薬が多い国産野菜」か、あるいは「おいしくて、値段が安くて、農薬が少ないヨーロッパ産野菜」か。
正直、日本の野菜が勝てる理由が見つからない。消費者はともかく、外食産業は、ヨーロッパ産に飛びつくだろう。実際、すでにいくつかのファミレスは、そういう動きを見せている。
日本は時代遅れの「農業後進国」
日本は鎖国をしながら、長いこと眠り続けてきた。その間に、海外の農業は急速に発展し、日本に追いつき、追い越していった。もし日本がこのまま眠り続けるならば、国内の農業は間違いなく滅びるだろう。その理由は、一言で言えば、日本がすっかり農業後進国になってしまったからだ。有機農業や自然栽培といった「昔ながらの農業」、あるいは「薬漬けの農業」、その二者択一しか今の日本にはない。しかし、そんな考え方は世界ではもう完全に時代遅れだ。
最新テクノロジーで農業問題の解決を
ヨーロッパでは、そのどちらでもない第3の農法が発達している。すなわち、最新のテクノロジーを使って日本よりもはるかに効率のよい農業をしながら、でも同時に、使う農薬の量は、日本よりもずっと少なくしている。最先端農業でありながら、安全で安心、環境にも優しい。
そんな事実を知っている日本人は、まだほとんどいない。日本は、国全体がそういった世界の進化にまったくついて行けていない。中国やインドの方がはるか先を行っていることも知らない。追い越されていることにすら気づいていない。みんな「日本の農業は世界最高」という幻想を信じたまま、時間が止まってしまっているのだ。
世界の変化は速い。TPPとEPAが始まってしまった今、もはや一刻の猶予もない。あと数年が生き残れるか滅びるか、その勝負の分かれ目だろう。
去年の夏ぐらいから「グリーンシードレス」という見慣れないブドウがスーパーに良く並んでいて、安くて意外に美味しいと思っていたところでした。この記事を読んで、これらのブドウがTPPやEPAのおかげで安く輸入されるようになったのだと理解しました。
今まで、私も外国産の野菜は農薬使用量が多いだろうと思ってちょっと避けていましたが、この記事を読んでそうでないことを知り、愕然としました。
ヨーロッパの最先端農業については、世界的な各大学ランキングで農業部門の一位をとっているオランダのワーヘニンゲン大学についての記事やTHIS TINY COUNTRY FEEDS THE WORLDを参照してください。オランダが世界を食べさせることを目標に、最先端のバイオテクノロジーを国家事業として農業に注力していることに驚かれると思います。
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