大腸がんと関連するDCC遺伝子の変異が鏡のような左右対称の動作をひきおこす。

体が鏡のように左右対称に動いてしまう一族を調べたところ、遺伝子の変異と判明

以下は、記事の抜粋です。


アメリカ人のアンドリー・マリオンさんは、片手で歯を磨いたり髪の毛にくしをいれたりすると、もう片方の手が全く同じ動きをする症状を持ちます。

そんな体が左右対称で同じ動きをしてしまう原因を調べたところ、遺伝にあることが判明しました。彼女の19歳になる息子を含め、ケベック州にいる一族の多くは同じ症状を持つそうです。無意識に鏡のように対称的な動きを行ってしまうのです。

これは非常にまれな遺伝の変異だそうで、神経の発達に影響を及ぼしているそうです。モントリオール大学がこの家系を調べたところ、通常は右脳が左半身、左脳が右半身の筋肉に命令し働きかけるところを、この遺伝を持つ人々はシグナルが左右両方に行ってしまうことがわかりました。

全部で11人がこの症状を持つといい、だいたいが手や指に現れるそうですが、その内3人は足の指やつま先まで同じことが起こるそうです。

ただし手に左右対称の動きが出ることがあっても、口などには現れないそうです。熱いコーヒーを運ぶといった動作では少々困難を伴うそうですが、小さな筋肉の動きに限られ、車を運転するときやスキーをする際に支障はないそうです。

マリオンさん自身はこの症状をたいしたことではないと気に留めていませんでしたが、いとこの一人が神経科医に相談した際に対称に動くことや家族に同じ症状の人がいると話したところ、強い興味を持たれたそうです。

家族の中には子どものときに不器用だったり、無意識の動きを恥ずかしく思う人もいたようですが、マリオンさんは「恥ずかしいと思ったことはないけれど、ビリヤードだけは出来なかった」と話しています。


元論文のタイトルは、”Mutations in DCC Cause Congenital Mirror Movements”です(論文をみる)。

DCC (deleted in colorectal carcinoma)は、免疫グロブリンスーパーファミリータイプの膜一回貫通タンパク質で、名前のように発現の減少が大腸癌と関連していることが知られていました。一方、ネトリンは軸索ガイダンス蛋白の1つであり、発生期の神経系で軸索を誘引したり反発したりすることが知られていましたが、1996年にDCCがネトリンの受容体であることがわかりました。

mirror movementを示す症例は、常染色体優性遺伝を示しました。遺伝子解析の結果、2つあるDCCの遺伝子の片方が全く機能していないことがわかりました。機能的なDCCの量が半分に減ることで、神経発生時の軸索誘導がうまく行かないと思われます。

アンドリー・マリオンさんは、鏡に向って右手でブラッシングをする時、必ず左手が動いて同じような動作をしてしまうそうです。

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