エーザイのアルツハイマー病治療薬候補アデュカヌマブ(aducanumab)の臨床第III相試験が成功、承認申請へ。

アデュカヌマブ 臨床第III相試験で得られた大規模データセットの新たな解析結果に基づき、アルツハイマー病を対象とした新薬承認申請を予定
エーザイがバイオジェンと共同開発している早期アルツハイマー病治療薬候補の「アデュカヌマブ(aducanumab、アルツハイマー病の神経変性過程に関わっていると考えられているアミロイドβ(Aβ)ペプチド凝集体を選択的に標的とする組換えヒトモノクローナル抗体)は、以前に報告したように今年3月に無益性(Futility)解析の結果のために最終治験の中止が発表されていました。ところが、その後に行った大規模解析(臨床第Ⅲ相試験であるEMERGE試験)の結果により認知機能の悪化を有意に抑制したとして、一転して米国食品医薬品局(FDA)に承認申請の予定であるとエーザイがプレスリリースを行いました。以下は、臨床第Ⅲ相試験(EMERGE試験)結果の抜粋です。


EMERGE試験は、新しい解析において、アデュカヌマブの高用量投与群は、CDR-SBにおいて、78週でのベースラインからの臨床症状悪化について、プラセボ投与群に比較して統計学的に有意な抑制を示し(23%抑制、P = 0.01)、本試験の主要評価項目を達成しました。

EMERGE試験のアデュカヌマブの高用量投与群では、事前に規定された副次評価項目で測定される臨床症状悪化についても、プラセボ投与群に比較して、それぞれ一貫した抑制傾向を示しました(Mini-Mental State Examination (MMSE;15%抑制、P = 0.06)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale 13 Items (ADAS-Cog13; 27%抑制、P = 0.01)およびAD Cooperative Study-Activities of Daily Living Inventory Mild Cognitive Impairment Version(ADCS-ADL-MCI ; 40%抑制、P = 0.001))。

また、アミロイドプラーク沈着のイメージングにより、アデュカヌマブ低用量群および高用量群の両群において、投与26週および投与78週でプラセボ投与群と比較して、アミロイドプラーク沈着の減少が確認されました(P < 0.001)。脳脊髄液中のタウレベルに関する追加バイオマーカーも、その臨床所見を裏付ける結果でした。

両試験において報告された、最も一般的な有害事象は、アミロイド関連画像異常(ARIA-E(浮腫))と頭痛でした。ARIA-Eが発症した被験者群のほとんどは、無症候性であり、ARIA-Eは4週から16週間以内にほとんど解消し、長期間におよぶ臨床的後遺症もありませんでした。

本解析結果と無益性解析によって予測された結果との違いに関して、バイオジェンは、本解析においては主にアデュカヌマブの高用量の投与が拡大したことによるものと判断しています。すなわち、解析対象被験者数の増加や高用量の平均投与期間が長くなったこと、より多くの被験者に高用量投与を可能とするプロトコル改訂がなされたこと、また無益性解析の時期や事前に計画されていたその判断基準などの複数の要因が関わったものと考えています。


アデュカヌマブは、現在多くの末期がんに用いられているオプジーボ®(一般名:ニボルマブ)と同じ組換えヒトモノクローナル抗体ですので、商品化された場合はかなり高価な薬になると思います。

アミロイドβ(Aβ)ペプチド凝集体を選択的に標的とするアデュカヌマブが、ヒト脳でのアミロイド沈着を軽減することは3年前のNature News and Viewsで紹介されています(記事をみる)。本当に効果がある可能性はあります。

日本で承認された場合、薬価や適応や医療財政はどうなるのでしょうか?

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