BRCA1とBRCA2:米国連邦裁判所がミリアド・ジェネティクス社の遺伝子特許を無効とする判決

Patent on Genes Ruled Invalid
以下は、記事の抜粋です。


3月29日、米国連邦裁判所のRobert Sweet裁判官は、Myriad Genetics社に対する訴訟において、原告勝利の判決を下した。Myriad社は、これまで乳がんに関連するBRCA1とBRCA2という2つの遺伝子の特許を持っていた。

Robert Sweet裁判官は、「Myriad Genetics社は、BRCA1とBRCA2を発見したが、発明したのではない。遺伝子は自然が作ったものであり、Myriad Genetics社の特許権は認められない」と述べた。

この判決は、Myriad Genetics社やその他のバイオテク会社の株主にとっては大きな打撃である。Myriad社は、遺伝子関連の特許を最初に獲得した会社ではなく、1980年に遺伝子特許が認められて以来、多くの会社が特許を獲得してきた。

本訴訟の原告団は、American Civil Liberties Union (ACLU)、医療関係組織、がん患者などで組織されている。米国保健社会福祉省は、連邦議会に対して、特許の有無に関わらず遺伝子研究を行うことを合法化する法案を可決するように要請している。同省はさらに、遺伝子診断に関する独占を防ぐ対策をとるように議会に提案した。


遺伝子検査業界にとって、非常に重要なニュースです。

現在、ヒト、動物、微生物、農産物などの遺伝子を特許・知的財産権として押さえた者は、研究開発や産業化を進める上で圧倒的に有利です。競争に出遅れた企業は、巨額のロイヤリティを支払って、遺伝子ビジネスを展開せざるを得ません。この状況が変わるかもしれないのです。

BRCA1、BRCA2についは、ミリアド・ジェネティクスにライセンス料を支払ったファルコ・バイオシステムズという京都の臨床検査会社が、遺伝子診断の日本国内独占実施権を持っています。つまり、これらのがん抑制遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんになりやすいのですが、その遺伝子診断ビジネスを独占しています。

BRCA1やBRCA2のような遺伝子特許を認めることは、遺伝子研究が始まったばかりの時には研究推進のインセンティブになったかもしれませんが、現在ではむしろ阻害要因です。遺伝子診断に関する独占状態を解消し、各企業が自由に遺伝子を用いた診断薬や治療方法を研究できることが、科学や医療の発展と患者の幸福につながると思います。

遺伝子診断特許のライセンシング機関設立などの動きがどうなるかも注目されます(記事をみる)。

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