新たなNASH治療薬、肝脂質比を有意に減少
非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steato-hepatitis)を略してNASH(ナッシュ)とよびます。肝臓に脂肪が蓄積することで起こる肝炎で、原因不明の肝硬変の重要な原因です。最終的に肝細胞癌に進行することもあります。今のところ、良い治療法はありません。以下は、記事の抜粋です。
NASH患者に対する、開発中のpegbelfermin(BMS-986036)の16週間皮下投与は、概して忍容性は良好で、肝脂質比を有意に減少したことが、Arun Sanyal氏らによる第IIa相試験(多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照平行群比較試験)の結果、示された。pegbelferminは、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)のPEG化アナログで、これまでに2型糖尿病を有する肥満症患者において、代謝および肝線維化マーカーを改善したことが示されていた。
主要評価項目は、治療16週間後の安全性と肝脂質比の絶対変化だった。結果、プラセボ群と比較して両pegbelfermin群において、絶対肝脂質比の有意な減少が認められた。プラセボ群-1.3%に対し、pegbelfermin 10mg群は-6.8%、同20mg群は-5.2%だった。大半の有害事象は軽度だった。
元論文のタイトルは、”Pegbelfermin (BMS-986036), a PEGylated fibroblast growth factor 21 analogue, in patients with non-alcoholic steatohepatitis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2a trial”です(論文をみる)。
まだまだ最終的な結論ではありませんが、8週時の中間解析で、主要解析について予想以上の変化量が認められたため被験者登録を早期に終了した、というのは非常に期待できる結果だと思います。
FGF21の詳細については、以下の記事をご参照ください。
細胞外分泌因子FGF21による生体機能調節
細胞間のシグナル伝達因子である線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)は22種類あり、それぞれの生理機能を担っています。FGF21はその1つで、肥満などの糖脂質代謝異常を改善する薬理作用を持つために注目されています。他のFGFと同様、細胞表面に存在するチロシンキナーゼ型受容体のFGF受容体(FGFR)に結合することにより活性を示すと考えられています。
FGF21には、肝臓における中性脂肪の蓄積抑制、筋肉におけるインスリン感受性の改善など非常に魅力的な薬理作用を持つが、半減期が0.5時間~5時間程度しかないことや熱に対する安定性が低いため、そのままの形で薬物として用いることが難しかったようです。今回の論文で用いられたpegbelfermin(BMS-986036)はその名の通り、FGF21をポリエチレングリコール(PEG)による修飾を行うことで、腎臓での排泄抑制、免疫原性の低下などを狙ったものだと思われます。
脂肪肝をもつ患者さんは多く、一部ですがNASHに発展してしまうヒトも増えています。今後の発展を注目したいと思います。
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