24時間の絶食によって、マウスの腸幹細胞の代謝が炭水化物の利用から脂肪の燃焼に切り替わり、幹細胞の再生能力が劇的に高まった

24時間絶食で腸の幹細胞の再生能力が向上することがマウス実験で判明
以下は、24時間の絶食によって、マウスの腸幹細胞の代謝が炭水化物の利用から脂肪の燃焼に切り替わり、幹細胞の再生能力が劇的に高まったという、記事の抜粋です。


腸幹細胞は腸の内壁を維持する役割を担っており、通常は5日毎に再生する。傷や感染症が生じた時、ダメージ修復の鍵となるもの幹細胞だ。しかし年齢が進むとその再生能力は低下し、回復するまでに時間がかかるようになる。

24時間餌を与えなかったマウスから腸幹細胞を採取・培養し、オルガノイドというミニ腸が作られるかどうか確かめてみたところ、餌を与えられなかったマウスの幹細胞は再生能力が2倍になっていることが分かった。

餌を与えられなかったマウスの幹細胞から採取したメッセンジャーRNAを解析すると、絶食によって細胞の代謝が、糖質のような炭水化物を燃焼する通常のものから脂肪酸の代謝に切り替わることが明らかになった。

この切り替えは、PPARという転写因子の活性化が、脂肪酸の代謝に関わる多くの遺伝子のスイッチを入れることでおこる。また、この経路を遮断すると絶食させても再生が強化されないことや、PPARの働きを模倣する分子を投与することで絶食と同等の効果が得られることも確認された。したがって、絶食をしなくても、薬剤によって再生を刺激できる可能性がある。


Cell Stem Cell誌に掲載された元論文のタイトルは、”Fasting Activates Fatty Acid Oxidation to Enhance Intestinal Stem Cell Function during Homeostasis and Aging”です(論文をみる)。

あくまで、寿命が3年足らずのマウスの実験ですので、どこまでヒトの断食に当てはまるかどうかはわかりませんが、ヒトの腸幹細胞でも炭水化物の利用から脂肪の燃焼に切り替わる可能性は高いと思います。しかし、ヒトでの絶食が腸幹細胞の再生能力の強化につながるかは、まだわかりません。そうであれば、記事に書かれているように、化学療法や感染症で、腸がダメージを受けているヒトには腸上皮の再生が強化されるメリットがあるかもしれません。

かなり昔のことですが、「バナナミルク断食」で命を縮めたがん患者が身近にいたので、こういう論文が、「がんの断食療法」などの「根拠」として使われないことを願います。

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