「オレキシン受容体拮抗薬が第一選択」の時代になりました。

「オレキシン受容体拮抗薬が第一選択」の今、知っておきたい使い分けの勘所
自分用のメモです。以下は、記事の抜粋です。


筋弛緩作用や依存性など、安全面で多くの問題を抱えていた不眠症の薬物療法は、オレキシン受容体拮抗薬の登場により一変した。2025年11月には4剤目となるボルノレキサント(商品名ボルズィ)が発売され、まずはオレキシン受容体拮抗薬を処方するという考えが常識になりつつある。睡眠薬の使い分けや中止の考え方について、最新の知見を紹介する。

北里大学の稲田健氏は、「今は基本的に小児を除く全ての不眠症患者に対して、オレキシン受容体拮抗薬が第一選択となる」と言う。「BZ受容体作動薬はふらつきやせん妄を悪化させる方向に働く。オレキシン受容体拮抗薬には筋弛緩作用はないとされており、副作用によるリスクが高い高齢者などに対しては特に、オレキシン受容体拮抗薬の優先度は上がる」。

一方、小児に対しては、現在使用できる睡眠薬は「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」に適応を持つメラトニン(メラトベル)のみ。稲田氏は「小児にはメラトニンが第一選択。効果が乏しい場合は、適応外ではあるが作用機序が類似するラメルテオン[ロゼレム]、安全面からオレキシン受容体拮抗薬という順番になる」と話す。

現在、日本で発売されているオレキシン受容体拮抗薬は、スボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)、ダリドレキサント(クービビック)、ボルノレキサントの4剤。国立精神・神経医療研究センターの松井健太郎氏は、「どの薬剤にも離脱症状がなく、中止のしやすさに差はない」と話す。一方、レム睡眠の増加によると考えられる悪夢や睡眠麻痺(金縛り)が出現することがあり、薬の種類や飲み方によっては翌日に作用が残ることにも注意が必要だ。

松井氏によると、効いたという実感が得られやすい印象があるのはレンボレキサントとダリドレキサントの2剤。特にレンボレキサントは、強固な入眠困難の患者に処方するケースが多いという。「ダリドレキサントは入眠困難と中途覚醒の双方に有効で、バランスがよい印象。一番新しいボルノレキサントは、半減期が短いので、持ち越し作用が気になるケースや夜間の中途覚醒時の服用などに用いている。同薬は翌日の自動車運転も禁忌とされていない。一方、服薬に抵抗がある人には低用量で使えて副作用がマイルドなスボレキサント、というような選択の仕方が考えられる」(松井氏)。4剤の比較を表1にまとめた。

効果を判断する目安は2週間。「十分な効果が得られない場合や、悪夢などの副作用で中止を希望する患者に対しては、他のオレキシン受容体拮抗薬への変更を検討する」と松井氏は話す。「他の背景要因がなく、どのオレキシン受容体拮抗薬でも悪夢を見てしまうような場合は、BZ受容体作動薬を処方することもある。その場合は比較的やめやすいエスゾピクロン(ルネスタ他)を選択することが多い」と松井氏は言う。

松井氏は、「睡眠薬をいろいろ試す前に、睡眠時間(寝る時間、起きる時間、ベッドにいる時間)の聞き取りがまず大事」だと話す。「高齢だと時間を持て余して早めに就床してしまう人も多い。臥床時間が8時間以上の場合は、床に就く時間を減らす指導が必要だ」(松井氏)。

オレキシン受容体拮抗薬が第一選択となった一方で、臨床現場を悩ませている問題が、これまでBZ受容体作動薬を使用してきた患者への対応だ。身体依存が生じ、他剤への変更を頑なに拒む患者も少なくない。「BZ受容体作動薬は、一度飲み始めると変更や中止が非常に難しい。既に使用している人は無理に切り換えようとせず、新たに睡眠薬を処方する際はオレキシン受容体拮抗薬を選択するというのが現在の考え方だ」と稲田氏は話す。

不眠症の薬物治療の新たな主役となったオレキシン受容体拮抗薬は、依存性が問題となっていたBZ受容体作動薬とは異なり「やめようと思えばいつでもやめられる」(松井氏)ため、臨床医が「やめ時」や「やめ方」に悩む局面は減少した。

不眠症の薬物治療は転換期にあり、強い薬で「眠らせる」という考えから、安全性の高い薬で「眠りを補助する」という考えに変わりつつある。「これからは、患者の生活を整えることを念頭に、睡眠薬を選択していくべきだろう」と稲田氏は語っている。

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