急性虫垂炎の抗菌薬治療、10年再発率・虫垂切除率は?
以下は、記事の抜粋です。
急性単純性虫垂炎の初回治療として抗菌薬治療を受けた成人患者を10年間追跡したところ、組織病理学的所見に基づいて確定された虫垂炎の再発率は37.8%、虫垂切除術の累積施行率は44.3%であった。論文著者のフィンランド・トゥルク大学のPaulina Salminen氏は、「成人の急性単純性虫垂炎患者の治療選択肢としての抗菌薬治療を支持するエビデンスだ」とまとめている。
抗菌薬治療の10年再発率―事前に規定された2次解析
フィンランドの6施設で、2009年11月~2012年6月に、年齢18~60歳、CT検査で合併症のない急性単純性虫垂炎と診断された患者530例を登録し、虫垂切除術を受ける群(273例)または抗菌薬治療を受ける群(257例)に無作為に割り付けた。
今回は、事前に規定された2次解析として、抗菌薬治療群における10年間の虫垂炎再発率に焦点を当てた検討を行った。
抗菌薬治療は、ertapenem sodium(1g/日)を3日間静脈内投与した後、レボフロキサシン(500mg、1日1回)+メトロニダゾール(500mg、1日3回)を7日間経口投与した。
事前に規定された10年時の副次エンドポイントは、抗菌薬投与から1年以降の虫垂切除術と虫垂炎再発率、および合併症であった。また、事後解析として、抗菌薬治療群で虫垂切除術を受けた患者または虫垂が温存された患者において、MRIを用いて虫垂腫瘍の可能性を評価した。
10年間の合併症発生率は有意に低い
抗菌薬治療群の257例のうち、253例を虫垂炎再発の評価対象とした。10年後までに8例が死亡したが、いずれも急性虫垂炎とは関連がなかった。
10年の時点における真の再発率(組織病理学的に確定された虫垂炎の発生率)は37.8%(87/230例)であった。また、累積虫垂切除術施行率は、1年時が27.3%(70/256例)、5年時が39.1%(100/256例)、10年時は44.3%(112/253例)であった。
一方、10年累積合併症発生率は、虫垂切除術群が27.4%(62/226例)であったのに対し、抗菌薬治療群は8.5%(19/224例)と有意に低かった(p<0.001)。
腫瘍の発生率について、両群間で統計学的に有意な差はなく、合併症を伴わない急性虫垂炎における10年後の全体の腫瘍発生率は1.2%ときわめて低かった。
QOLは、両群間に有意な差はなかった。虫垂切除術群の78.0%(167/214例)と抗菌薬治療群の67.3%(111/165例)が、再度同じ治療を選択すると回答した。
著者は、「抗菌薬治療群における真の再発および虫垂切除術は、その多くが初回発症から2年以内に発生し(それぞれ、65/87例、87/112例)、10年後の時点で抗菌薬治療の効果は持続しており、大部分の患者でそれ以上の再発は認めなかった」「将来、抗菌薬による外来治療が普及すれば、総費用と医療資源の節約効果が顕著に増加する可能性がある」としている。
元論文のタイトルは、”Antibiotic Therapy for Uncomplicated Acute Appendicitis
Ten-Year Follow-Up of the APPAC Randomized Clinical Trial単純性急性虫垂炎に対する抗生物質療法:APPAC無作為化臨床試験の10年間追跡調査)”です(論文をみる)。
急性虫垂炎とは、大腸の先端から垂れ下がった「虫垂」という部分に細菌感染が起こり、炎症が強まる病気で、一般に「盲腸炎」とも呼ばれます。初期はみぞおちやおへそ周辺の痛みから始まり、徐々に痛みが右下腹部に移動するのが特徴で、放置すると破裂して腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。
この論文は、急性虫垂炎を手術をしない、いわゆる「抗生物質で散らす」治療を評価したものです。これをみると、手術に比べて再発のリスクはある程度あるものの、合併症が圧倒的に少ないので、最初に行う治療として悪くないと思います。
ただ、この治療で用いられた抗生物質、エルタペネム(Ertapenem)は、日本国内では未承認のカルバペネム系抗菌薬で、要望が出されている薬剤の一つです。広範囲のグラム陽性・陰性菌に効果を持つ長時間作用型注射剤で、海外では主に重症感染症に使用されています。


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