今年の「画期的発見」は遺伝子編集技術「クリスパー」、米科学誌
以下は、記事の抜粋です。
Science誌は12月17日、「クリスパー(CRISPR)」と呼ばれる遺伝子編集技術を「2015年の画期的発見」に選定した。
この技術は中国の研究者が今年、不妊治療院から得た生育不能のヒト胚のDNAを故意に編集したと発表して以降特に、物議をかもしており、世界の科学者らは最近、人間に恒久的変化をもたらしかねないとして、妊娠を予定している胚への介入は避けるよう、研究者らに促している。
だが、サイエンスは、多くが「クリスパーがゲノム編集で他の手法に比べ、遺伝子を適切な部位に配置する能力が優れていることと、その手法が低コストで使いやすいこと」に興奮していると述べている。
Breakthrough of the Year, 2015にScience誌の記事があります(記事をみる)。
Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)は、ダニスコ社というヨーグルトメーカーの研究者によって2007年に発見された、細菌や古細菌においてウイルスやプラスミドといった核酸を含む侵入物を標的し、排除するよう進化した適応免疫の一つです。
ターゲット配列を認識し、二本鎖DNAを切断するCRISPR associated protein 9 (Cas9)と組み合わせることで、非常に簡便かつ安価に遺伝子編集が可能になりました。この方法は、「CRISPR-Cas9システム」とよばれ、日本でもキットが数社から発売されています(コスモバイオの説明をみる)。
ブレークスルーに選ばれたのは、簡便性と安価さが他の遺伝子編集法を凌駕していることと、本法を使って、ヒトの遺伝子改変、ブタの染色体中の数十箇所のレトロウイルス遺伝子の除去、蚊などの病原昆虫の遺伝子改変による無害化、、、などなどの数多くの成果が報告されたためだと、Science誌は書いています。
CRISPR法は、DNA二本鎖を切断してゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができます。これまでの遺伝子組換え法と違って、外来遺伝子をゲノム上に残さずにゲノム改変が行えるので、「遺伝子組換え生物」ではない「遺伝子改変生物」を作りだすことができます。この方法の普及のスピードに、法や倫理がついて行けるかどうかが問題になると思います。
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