心筋梗塞後にβ遮断薬は今日でも標準治療薬か?正反対の結論を導いた2つのトライアル
以下は、記事の抜粋です。
10年ほど前までは、β遮断薬は心筋梗塞発症後の再発予防と生命予後改善薬の標準治療薬の代表格として位置付けられており、その処方が行われていない場合には、その医療機関や担当医師がEvidence Based-Medicineを順守していないとみなされていた時代が長く続いた。しかし近年、急性心筋梗塞後の治療は、PCIによる血行再建術が普及し、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬処方が必須となり、また高脂血症治療薬による厳格なコレステロール管理がなされるようになるなど、その状況は大きく変わった。
そのような時代の変遷の中で、β遮断薬は心筋梗塞後に必須の治療薬として残存しているのか。その問題に関しては、これまで異なった結論の臨床試験結果が発表されている。今回もまったく正反対の2つの大規模臨床試験結果が、NEJM誌8月30日号に並んで発表された。その2つの試験について対比させながら、コメントを試みる。
スペインとイタリアから発表されたREBOOT-CNIC試験は、左室EFが40%以上の急性心筋梗塞8,438例をβ遮断薬を使用する群と使用しない群にランダム化して、3.7年追跡したオープン臨床試験である。主要エンドポイントである総死亡、心筋梗塞再発、心不全入院の発生率は、β遮断薬使用群22.5件(1,000 patient-years)、非使用群21.7件で、ハザード比(HR)は1.04(95%信頼区間[CI]:0.89~1.22)と両群に有意差は認められなかった。注目すべきは、両群共に対象者の約82%が完全血行再建を受けているということである。
一方、β遮断薬は今でも有効であるという結論を示したノルウェーのBETAMI-DANBLOCK試験は、EF40%以上の心筋梗塞5,574例をβ遮断薬使用群と非使用群にランダム化してオープンラベルで3.5年追跡した試験である。
結果は、主要エンドポイントである総死亡、心筋梗塞再発、血行再建、脳梗塞、心不全、致死的心室性期外収縮の総合は、β遮断薬使用群14.2%、非使用群16.3%で、HRが0.85(95%CI:0.75~0.98、p=0.03)であり、β遮断薬使用群で有意に少なかったという結論であった。本試験でも両群共に約92%がPCIによる血行再建術を受けており、抗血小板薬も両群の約90%が処方されていた。
そこで両試験の結果をまとめてみたのが以下の表である。

以上をまとめると、心機能低下例では有効の可能性はあるがが、心不全のない例では血行再建が完全、かつ、脂質や血圧管理などが良好であれば必要はないかもしれない。しかし、すでにβ遮断薬を継続している症例では中止すべきではないであろう。
記事には「正反対」と書かれていますが、使って悪くなるわけではないので、使うことにしようと思います。


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