誤嚥性肺炎の第一選択薬

誤嚥性肺炎の第一選択薬
自分用のメモです。m3での質問と答えです。


Q:誤嚥性肺炎と診断した時で、喀痰培養、感受性検査の結果が出ていない時に、どの抗生剤を第一選択薬として使用しておられますか?またその理由は何でしょうか?ご教授ください。

A1:グラム染色が可能な場合は行うことが望ましいですが、難しい場合は患者背景や過去の培養結果に応じて緑膿菌や耐性菌のカバーが必要かどうかも考慮した上で、アンピシリン・スルバクタムやセフトリアキソンを使用することが多いです。誤嚥性肺炎の起因菌の多くは口腔内の常在菌ですので、これらをカバーし、かつスペクトラムが広すぎない抗菌薬が適切であるためです。 セフトリアキソンの方が特に誤嚥リスクが高い患者では良い可能性を示した報告もありますが(Open Forum Infect Dis . 2025; 12: ofaf133.)、実臨床では両者でそこまで効果に違いを実感することはないです。

A2:SBT/ABPC(アンピシリン・スルバクタム)、いわゆるユナシン注射剤が当地では第一選択です。理由は嫌気性菌を含めたカバーができるからですね。

A3:注射剤であれば、CTRX(セフトリアキソン)を第一選択としています。以前は「誤嚥性肺炎の治療では嫌気性菌カバーが必要」と考えられていましたが、近年では必ずしも必要ないという報告が多いです。近年の大規模コホートやメタアナリシスでも、嫌気性菌カバーの追加は死亡率や治癒率の改善を示さず、むしろClostridioides difficile感染など有害事象のリスク増加が指摘されています。もちろん、膿胸や肺膿瘍などの嫌気性菌の関与があきらかな場合はSBT/ABPCやTAZ/PIPCも選択肢になります。重症度、耐性菌のリスクによっては、TAZ/PIPC、カルバペネムが選択肢になります。

A4:自分の場合、禁忌がなければセフトリアキソンを第一選択薬にしています。国内から、TAZ/PIPC(タゾバクタム・ピペラシリン、「ゾシン®」or「タゾシン®」)vs CTRXの比較データで30日死亡率、入院期間、抗生物質治療に群間差はなく、CTRXの方が安価であった報告があります。SBT/ABPC vs CTRXの比較データ(こちらも国内)でも、治療成功率や30日死亡率に差はなく、コストはCTRXの方が安かったとの報告もありました。

A5:以前は嫌気性菌のカバーも意識して、アンピシリンナトリウム・スルバクタムを第一選択にしていましたが、1日複数回の点滴が必要であり、細菌は1日1回で済むセフトリアキソンを第一選択にしています。効果の点で劣る印象はありません。

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