参院選が引き起こした3つの重たい事実
冷泉彰彦氏による記事です。以下は、抜粋です。
参院選の結果、3つの重たい事実が残りました。
1つは、外国人労働者の問題です。参政党が主張した「日本人ファースト」というのは、実は曖昧なスローガンであり具体性には乏しいものです。そうではあるのですが、漠然と社会に浸透していた「このまま外国人労働者が増えれば、日本社会が変わってしまう」という不安を票にすることに成功したと見ることができます。
さしあたって具体的な影響があるとは思えませんが、海外での報じられ方は意外に大きなものがあります。その結果として、「どうやら日本で働いたり留学することで、不快な思いをすることが、この先、増えていきそうだ」という印象が広がったのは間違いありません。
これからの日本は「外国人にフレンドリーではなくなりそうだ」という情報発信の結果、来る人材の質が徐々に下がるという効果だけが出てくる危険があると思います。
2つ目は、財政規律の緩みです。減税も給付も今後の国会での駆け引き次第では、どうなるかは分かりませんが、民意は減税を望んだのは事実です。そして、財源は示されていません。ということは、財政はさらに悪化する可能性が出てきたと思います。
日本の国家債務はGDPの200%以上という超危険水域にありながら、国民の個人金融資産と相殺されているので国家としては対外債務は少ないという「神話」が続いていました。
ですが、このまま財政規律を緩めていけば、円の価値が下がり、金利を上げないと国債の借り換えができなくなる日が来ます。そうなれば、超円安とハイパーインフレの時代に突入する可能性があります。そのような破綻的な危機を回避するための堤防が、今回の選挙結果により徐々に削られてしまったという見方ができます。
3つ目は、偶然かもしれませんが絶妙な選挙結果です。立憲、国民、参政の3つの政党の中で、突出した勝利を獲得した政党はありませんでした。ということは、責任野党、つまり敗北して過半数を喪失した与党に変わって、民意を受けて新政権を組織する「責任」のある政党が「ない」ことになったのです。
経済衰退と、苛酷な国際政治の環境の中で、政権という「火中の栗」を拾うよりは、野党として有権者の現状不満エネルギーに伴走していたほうが、はるかに楽な選挙戦が戦えるのです。
今回の結果は、与党にノーを突きつけるには十分な敗北を与えつつ、野党への票が分散することで、それぞれの野党が「楽な野党」のポジションにとどまることを許す結果となりました。ということは、今後も少数与党、多数野党という壮大な無責任が続くという可能性があります。
先日、自民党の佐藤勉元総務会長、萩生田元政務調査会長や齋藤前経済産業大臣らが、参議院選挙の結果を踏まえ、自民党は野党になり、一から出直すべきだという考えだと報道されました(記事をみる)。楽な選挙戦を戦いたいのかもしれません。そうなると、超円安とハイパーインフレの時代に突入する可能性はもっと高くなりそうです。



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