御用放送局NHKの「クローズアップ現代」

日本の乱獲は見て見ぬふりで、中国の乱獲を一方的に非難するクローズアップ現代

以下は、「勝川俊雄 公式サイト漁業について語ります。」というブログからの抜粋です。勝川さんは、水産学が専門の三重大学生物資源学部の准教授です。


昨日のクローズアップ現代(国境の海で魚が消える ~追跡 中国虎網漁船~)を録画で見ました。内容はこんな感じ。

豊かな資源を求めて、東シナ海に押し寄せる中国漁船。漁場を追われ急速に衰退する日本漁業。漁業の衰退で中国漁船が国境の中に入りやすくなっている。中国が虎網というむちゃくちゃな漁法で乱獲をしまくっているので、日本の漁師さんたちが困っているというお話です。中国の虎網漁船を取り締まる水産庁の監視船の乗組員は、「我が国の水産資源を責任もって守る」と熱く語っていました。

この番組では、日本漁業が一方的な被害者として描写されていました。視聴者の多くは、中国漁業に対して悪印象を持つと同時に、日本の漁師に同情を覚えたことでしょう。しかし、歴史をひもといてみれば、かつては豊穣の海だった東シナ海の水産資源を破壊したのは、他ならぬ日本なのです。

日本漁船が東シナ海に進出したのは、1908年に汽船トロールという技術が導入されてからです。汽船トロールは瞬く間に広がり、沿岸漁民との深刻な対立を生み出しました。沿岸での操業を禁止されたトロールは、外洋へと向かったのです。トロール漁業が活発化すると、マダイなどの高級魚は、瞬く間に獲り尽くされました。こういう漁法で、魚を自由競争で奪い合ったら、魚がいなくなるのは当然でしょう。

研究者も、管理当局も、漁業者も、魚を獲りすぎているという自覚はあったにもかかわらず、戦前と同じ失敗を繰り返してしまったのです。1980年代から、日本漁船は採算がとれなくなりました。撤退した日本の中古船を買って、中国人が同海域で操業を開始しました。この漁場に中国漁船が進出してくるのは、1980年以降の話なのです。その時点で、東シナ海の資源は、日本によって、すでに乱獲をされていたのです。

クローズアップ現代は、日本の過去の乱獲は無かったことにして、「中国の最近の乱獲で日本の漁業が衰退している」と主張します。実際は、日本の漁業者が乱獲をして、自滅したのです。中国漁船が日本漁業衰退の主要因ではないことは、中国船が来ていない太平洋側の漁業も、日本海側と同様に廃れていることからも、明らかでしょう。乱獲を放置して、日本の水産資源の減少に荷担している水産庁が、「我が国の水産資源を責任もって守る(キリッ)」と言っていたのには呆れてしまいました。

以上のように、日本の乱獲で、東シナ海で捕れる魚は減少の一途を辿りました。コストが高い日本漁船では利益が出せなくなり撤退をしたところに、コストが安い中国船が入ってきて、日本が乱獲をした絞りかすを、容赦なく絞っているのです。

実は、NHKはこのブログの記事に書かれた事実を全部知っていました。NHK長崎が俺のところに取材にきたので、こういった背景を説明した上で、西海区水研の報告書のコピーを渡してあります。知らなかったとは言わせない。NHKは、歴史的な経緯をすべて理解した上で、日本の乱獲については一切触れず、「中国の乱獲のせいで、無辜な日本の漁師さんたちが迷惑をしている」という番組をつくったのです。


文章は短くするために少し改変していますが、内容はほとんど変わっていないと思います。問題があればコメントでご指摘ください。

勝川さんは、東シナ海のトロール漁業の歴史や戦後の東シナ海漁場の漁獲量データなども含めて非常に詳しく書かれています。興味を持たれた方は是非元記事をお読みください(元記事をみる)。

コメント

  1. Frank より:

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    はじめまして。
    すばらしい情報量のブログですね。興味深く拝見しております。
    現在ドイツ留学中なのですが、多くの中国人と出会う機会があり、中国に対する見方が変わりました。というのも、知り合う人々が総じて印象が良く、更に何人かの尊敬すべき、素晴らしい人間に出会ったという事もあると思います。
    今迄は、手が付けられない世界のジャイアン、中国政府。という印象を持っていたのですが、中国の人口と比較すると、中国の資源(海岸等もですが)は限られており、将来の中国の食料自給問題や、国民の生活水準の向上を視野に入れると、共産党という中国政府の背景にある問題がうっすらと見えてきます。
    私がドイツで知り合う中国人は恐ろしく優秀な人が多く、中国(韓国も含め)の受験競争などの話を聞くと、どうしたら将来の日本を良くして行けるのかと色々考えてしまいます。
    と、ブログとはあまり関係ない内容になってしまいましたが、これからも更新を楽しみにしております!
    失礼いたしました。

  2. ko--- より:

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    どうもです!ブログを拝見しました。アメブロデビューです。読者登録して頂けたら幸いです☆また読ませていただきたいので更新頑張ってください!

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