HIV増殖を一時的に止めるワクチン、スペイン研究者らが開発
以下は、記事の抜粋です。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の体内のウイルス増殖を一時的に止める治療ワクチンを開発したと、スペインの研究チームが1月2日、Science Translational Medicine誌に発表した。
このワクチンは、熱処理によって不活性化されたHIVに暴露された免疫細胞を基にしたもので、感染予防ではなく、感染者の治療を目的としている。HIV感染者36人を対象に試験したところ、一部の患者で体内のHIV量が劇減するなど、こうした治療法では過去最高の結果が得られたという。
12週間にわたる試験の後、ワクチンを接種した22人中12人でウイルス量が9割以上も減った。一方、ワクチンを含まない接種を受けた対照群11人では、同様の変化がみられたのはわずか1人だった。
しかし24週間後では、ワクチンの効果は薄れ始め、同様の9割のウイルス量減少がみられたのは、ここまで残ったワクチン接種患者20人のうち7人だけだった。対照群10人ではウイルス量減少はみられなかった。 また1年後にはワクチンの効果は消失し、患者は通常の抗レトロウイルス剤の多剤併用療法に戻らなければならなかった。
多剤併用療法は、長く続けると副作用が生じる可能性があるほか、患者への経済的負担が大きい。だがチームによると、このワクチンによって患者は一時的にだが、こういった負担から解放されることができるという。
元論文のタイトルは、”A Dendritic Cell–Based Vaccine Elicits T Cell Responses Associated with Control of HIV-1 Replication”です(論文をみる)。
現在のHIV感染症治療は記事にもあるように、複数の薬物を併用する多剤併用療法(論文ではCombination antiretroviral therapy (cART)、Highly Active Anti-Retroviral Therapy(HAART)ともよぶ)が主流です。これは耐性ウイルスの出現を防ぐために、逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬などの作用機序の異なる複数の薬物を併用する治療法です(詳しい説明をみる)。
多剤併用療法は、HIV感染(AIDS)患者の生存とQOLを劇的に改善しました。しかし、感染の再燃や増悪を防ぐためには薬を一生飲み続ける必要があります。本研究では、HIV特異的な免疫を誘導することで、薬物療法の中断後もウイルスの増殖を抑制することをめざしました。記事のように、短期間ですが有効でした。
詳細はわかりませんが本研究では、2011年のノーベル賞受賞者Ralph Steinman氏が発見した樹状細胞を、熱処理したHIV-1抗原で免疫刺激しているようです。著者らによるとこの方法は、簡単、安全かつ患者への苦痛が少ないということです。さらに改善されて、AIDS患者の福音となることを願います。
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