501種の両生類が減少、90種が絶滅、ツボカビ症で……カエルやイモリを脅かす「殺し屋」による被害状況が最新研究で明らかに
以下は、記事の抜粋です。
その「殺し屋」は、数十年前から世界中の両生類を死に至らしめてきた。人間が知らないうちに世界中に拡散させてしまった病原体が、両生類の多様性に莫大な影響を及ぼした。
カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)とイモリツボカビ(Batrachochytrium salamandrivorans)というツボカビが原因で、少なくとも501種の両生類が減少しているという。これは、現在知られている両生類のおよそ15分の1の種数に相当する。
ツボカビの被害が確認された501種のうち、90種は野生下で絶滅したか、絶滅したと推定されている。別の124種は個体数が90%以上減少した。
ツボカビは、これまで科学者が調べてきた病原体の中で最もたちの悪いものでした。ツボカビには数百種あり、そのほとんどは無害だ。しかしカエルツボカビは変わり者で、両生類の皮膚のタンパク質が大好物だ。
ツボカビと共存できる両生類もいるが、たいていの種はツボカビに感染すると、呼吸や水分調節にとってなくてはならない皮膚が侵される。やがてツボカビが全身に広がり、最終的には心停止に至る。
カエルツボカビは致死的であるだけでなく、非常に拡散しやすい。ほかの病原体が特定の宿主を標的とするのに対し、カエルツボカビは695種以上のカエルに感染する。そのうえ、感染したカエルはすぐには死なないため、その分、広まりやすくなる。ツボカビに感染しても死なないウシガエルなどは、病原体をほかの動物に広める宿主となっている。
さらにツボカビは、接触や水を介して拡散するし、条件が整えば、宿主の体外で数週間から数カ月間、場合によっては数年間も生き延びる。「パンデミックを起こすのに理想的な性質です。人間に感染する病原体だったら、ゾンビ映画になるでしょう」と、サイモンフレーザー大学のダン・グリーンバーグ氏は言う。
カエルツボカビ症の流行は、ひっそりと始まった。科学者たちがカエルの大量死に最初に気づいたのは1970年代のことだった。カエルツボカビは1997年に初めて論文に記載され、それから10年もしないうちにカエルの大量死の容疑者の筆頭に挙げられるようになった。
この現実を前に、論文著者らは、最善策は両生類の国際取引を厳しく規制すべきだと提唱している。病原体の拡散をなかなか阻止できないのは、おそらくペット取引の影響が大きい。2018年のある研究は、ペットショップで売られている生物を調べたところ、すべての主要なカエルツボカビ株が確認されたと報告している。
カビは真菌とよばれる生物で、我々やカエルなどの両生類と同じように、細胞核をもち、ゴルジ体や小胞体、さらにはミトコンドリアなどの細胞内小器官を持っています。そのため、ヒトやカエルの細胞活動に影響せずに真菌だけを殺す薬の開発は簡単ではありません。
記事によると、ツボカビもほとんどは無害な種だったものが、交配や突然変異によって、凶悪な種に変化してそれがパンデミックを引き起こしたようです。真菌を殺す抗真菌薬の種類はそれほど多くないので、ヒトで同様なカビによるパンデミックが起きると大変です。
ヒトの超高齢者の場合、免疫力や体力が低下しているので、カビの感染は毒性が強くなくても生命の脅威になる可能性があります。がんが克服されつつある現在、カエルだけでなくヒトにとってもカビが最大の生命の脅威になる時代が来るかもしれません。
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