日本では推奨されるマンモグラフィー:「検診で患者にメリットがあるのは50~59歳のみ」WHO見解

マンモグラフィー「40~49歳、70~ 75歳は研究目的のみ」 WHO見解
以下は、記事の抜粋です(太字はブログ著者による)。


乳癌で亡くなる女性は毎年50万人にも上る。末期になってから乳癌と診断される場合には5年生存率は10~40%だ。一方、早期に十分な治療ができれば、5年生存率は80%にもなる。そのため、健康な集団を対象としたマンモグラフィーが広がっていた。しかし、WHOは2014年10月29日、早期発見のために重要とされてきたマンモグラフィーによる乳がん検診に関する以下の様な方針説明書を発表した。

WHOは、女性の年齢を40~49歳、50~69歳、70~75歳の3グループに分けて、その地域の資金や設備の状況別に、それぞれ乳癌検診の種類や頻度を推奨した。3
50歳から69歳の場合、資金面でも設備面でも充実し、比較的健全な医療制度がある場合には、WHOは2年ごとのマンモグラフィーによる組織的な集団検診を行うよう推奨する。ただし、受ける人がメリットとともに、リスクについての理解を十分にするのが前提だ。十分な合意形成がある場合に限って実施するという内容だ。
一方で、WHOは低年齢、高年齢については、あくまで限定的な価値しか認めていない。40~49歳と70~75歳の女性に対しては、「研究の一環としての目的」で実施する場合に限って、組織的な集団検診を推奨する。

WHOの方針では、前述の通り、39歳以下、76歳以上は検討対象にも入っていない。WHOの視点からすると、基本的に価値はないと考えられるのだろう。


資金や設備の充実度で推奨を分けているのが今回の方針説明の特徴になっていますが、日本は「資金面や設備面で充実している地域」に該当すると考えて上の抜粋を行いました。

重要なことは上の記事にもあるように、「マンモグラフィーによる検査には、がんを発見するメリットがある一方、陽性となった場合の過剰診断や過剰治療、放射線被ばくによるリスクもある」ため、リスクとメリットのバランスが不確かであることだと思います。日本の歪んだメディア情報の中で十分な合意形成ができるのでしょうか?
また、乳房組織密度の高いヒトの場合は「吹雪の中のシロクマ」のように発見が困難だそうです(記事をみる)。痛い思いをしてマンモグラフィーの検診を受けたのに発見されず、その後大きな塊になって初めて自分で気がついたという例もあります。

以前にも書きましたが、現状の過剰診断や過剰治療がほとんど問題にされておらず、キャンペーンのスポンサーの利益相反なども見過ごされていることが問題です。キャンペーンの結果、治療や検査が増えれば、キャンペーンスポンサーの製薬会社や検査会社の利益が増えます。

長年のピンクリボン運動にもかかわらず、乳がんによる死亡はほんの少ししか減少していません。早期発見キャンペーンのために、多くの女性が不必要な治療を受けているかもしれません。以前TBSが推進していた「20‐30代女性に限定した乳がん検診」は疑いなくメリットよりもリスクが多いと思われます。

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コメント

  1. あ* より:

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    私個人は乳がん健診の有効性に疑問だったので受けたことはありませんでした。乳房の「しこり」として認識できてからマンモグラフィーで状態をチェックしても遅くはないと考えていたからです。実際、出産して授乳が終わってから、もう乳汁は出ないようになって、結構、経ったとき、しこりに触れるようになって市立病院に行ったら、マンモグラフィーで状態をチェックして「悪いものではなさそうなので経過観察」ということになり、しばらくしたら消えました。
    初め、よかれと思って始めたことでも、効果がないと判明したら、やめるのが良いと思います。

  2. やす より:

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    啓発キャンペーンに乗って、真面目に検診を受けていた頃もありましたが、面倒、費用が高い、何をどこまで検査したら安心かわからない・・・といった理由で、最近はさぼっています。
    一方で、早期発見キャンペーンとは縁のない稀ながんで、ティーンの息子を亡くしました(骨肉腫)。
    検査会社や製薬会社にとって利益があるがんでは、研究やキャンペーンが積極的に行われるのに、希少がんは利益がでないため研究が遅れているのが残念です。

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