気管支喘息の発症と関連する遺伝子領域―人種共通なものと特異的なもの

発症関連のDNA領域発見=成人気管支ぜんそく-日米チーム

以下は、記事の抜粋です。


成人気管支ぜんそくの発症と関連のあるDNA領域を日本人の患者で5カ所発見したと、理化学研究所や札幌医科大、京都大、ハーバード大などの日米研究チームが7月31日付のネイチャー・ジェネティクス電子版に発表した。

これら領域の中には、免疫機能の信号伝達に重要な役割を果たす「GAB1」遺伝子のほか、風邪のウイルス感染や喫煙などにより気道で働く「TSLP」遺伝子などが含まれていた。TSLP遺伝子は米国の白人患者でも働いていることが確認された。

成人気管支ぜんそくは環境要因と遺伝要因とで起きるが、本成果は遺伝要因による発症メカニズムを解明し、より効果的な治療薬を開発するのに役立つという。


元論文のタイトルは、”Genome-wide association study identifies three new susceptibility loci for adult asthma in the Japanese population”です(論文をみる)。

研究では、今流行の Genome-wide association studies (GWAS)で、日本人を対象に、7,171例の成人気管支ぜんそく患者と27,912例のコントロールを調べた結果、5つの疾患感受性遺伝子を同定したと報告しています。5つの中2つ、TSLPHLA遺伝子については既に報告があるので、GAB1とあと2箇所の新規関連領域を同定したという報告です。

同じNature Geneticsに、”Meta-analysis of genome-wide association studies of asthma in ethnically diverse North American populations”というタイトルの論文も掲載されています(論文をみる)。こちらも同様のGWASですが、小児型も含めたすべての気管支喘息を北アメリカに在住する様々な人種で調べています。同定した遺伝子領域はこちらも5つで、上の論文で出てきたTSLPが含まれています。さらに、IL1RL1TSLPIL33の3つの領域は、ヨーロッパ系、アフリカ系、ラテン系のすべてで関連が認められ、PYHIN1はアフリカ系特異的に関連が認められたそうです。

インターロイキン(IL)33とその受容体(IL1RL1)やThymic Stromal Lymphopoietin (TSLP)などのサイトカインが、気管支喘息の発症に関わることはリーズナブルです。また、GAB1は、IL-3、IL-6、インターフェロンなどの下流で働く足場タンパク質で、PYHIN1は白血球や肺に発現し、インターフェロンで発現誘導されるタンパク質に多く含まれるタンパク間相互作用に関わるpyrinドメインをもつタンパク質だそうです。これらの情報が、より効果的な治療薬を開発するのに役立つことを期待しましょう。

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