ボルバキア菌に感染した蚊を用いたジカ熱やデング熱に対する感染症対策

シンガポール 繁殖能力失わせた蚊で感染症対策

以下は、記事の抜粋です。


ジカ熱やデング熱など、蚊を媒介する感染症への対策が課題となっているシンガポールでは、人工的に繁殖能力を失わせた蚊を自然界に放出する実験が新たに始まりました。

10月18日から始まった実験は、ヒトを刺さないオスの蚊を、「ボルバキア」と呼ばれる特殊な細菌に感染させることで繁殖能力を失わせたうえで、自然界に放すものです。

シンガポール政府は、放された蚊が生息する場所や範囲について今後半年かけてデータを収集し、その後シンガポール全土で蚊を放出する計画です。

赤道直下のシンガポールでは、ことし8月にジカ熱の集団感染が発生し、感染者は400人を超えたほか、デング熱の感染者もことし1万人を超えるなど、蚊が媒介する感染症への対策が課題となっています。


関連記事にも書きましたが、ブラジルでは約2年前に、1万匹のボルバキアに感染した蚊をリオデジャネイロ北部で放出しました。インドネシアでも既に同じような試みをスタートしたと聞いています。そろそろ、これらの国での成果が報告されると思います。

ボルバキア(Wolbachia)というのは、下の電顕写真のように、昆虫の細胞の中でミトコンドリアのようにみえる共生細菌の1種で、昆虫ではその約60%に感染が認められるほど広く分布しているそうです。wMelとよばれるボルバキアは、ヒトの細胞には感染せず、蚊からヒトへのデングやジカなどのアルボウイルスの感染を抑制するそうです。

下図のように、ボルバキアに感染したオスと非感染メスとの交配で生まれた卵が発生しない細胞質不和合(cytoplasmic incompatibility)という現象があります。また、オス・メス、またはメスのみがボルバキアに感染している場合は、次世代の蚊にボルバキア感染が受け継がれます。このため、将来的にはデング熱やジカ熱のウイルスを持つ蚊を根絶させることが期待されているそうです。

遺伝子改変昆虫よりは、世の中に受け入れられ易い方法かもしれません。マラリア感染も抑制するという報告もあります。とりあえず、アルボウイルス感染を本当に根絶させることができそうかどうかの早く結果を知りたいと思います。

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