「やせ薬」がアルコール依存症に効く可能性、禁煙の助けにも…肥満や2型糖尿病の「GLP-1受容体作動薬」に驚きの「副作用」、研究が続々
以下は、記事の抜粋です。
- シャノン・ヒンダーバーガーさん(49歳)は、ただ体重をいくらか減らしたいという思いで2022年8月に「GLP-1(グルカゴン様ペプチド―1)受容体作動薬」(以下、GLP-1薬)を使い始めた。そして14カ月間で、実際に体重が30キロ近く減った。ところが、この薬は別の驚くべき効果をもたらした。飲酒の欲求が消え去ったのだ。
薬の副作用は通常、悪いものだとされるが、上記のようなケースは例外だ。オゼンピックやウゴービ(一般名セマグルチド)などのGLP-1薬は、空腹感や食べ物への関心を抑える効果があり、肥満や2型糖尿病の治療薬として、多くの人の体重を減らすのを助けてきた。
そうした本来の目的の一方で、予期せぬ効果も報告されている。GLP-1薬を使用している間は、酒やたばこ、娯楽用または違法な薬物への興味が薄れるとの証拠が集まりつつあるのだ。
2024年5月28日に発表された研究では、肥満患者8万3825人の電子カルテを調べたところ、セマグルチドを使っている患者は、12カ月間の追跡期間中にアルコール使用障害(依存症や乱用など)を発症するリスクが50%以上低かったことがわかった。ナルトレキソン(国内未承認)やトピラマートといったほかの減量薬を使っていた患者には、同様の効果は見られなかった。
2024年8月号の医学誌「eClinical Medicine」に掲載された別の研究では、2型糖尿病患者へのセマグルチドの使用が、ニコチンの過剰摂取の減少と関連していることがわかっている。
また、2024年10月16日付けで医学誌「Addiction」に掲載された研究では、アルコール使用障害を持つ人がGLP-1薬を使っている場合、酩酊するほど飲酒する割合が50%低下することが示された。同様に、オピオイド(麻薬や鎮痛剤として働く薬物)使用障害を持つ人々では、過剰摂取する割合が40%低かった。
もし今後の研究によって、こうした物質乱用への効果が裏付けられれば、GLP-1薬は依存症の治療に革命をもたらす可能性があると、専門家は言う。
減量を助けるために設計された薬が、どのように物質使用障害の治療に効果をもたらしているのかは、完全には解明されていない。
「GLP-1薬は、脳内で特に報酬系のドーパミン経路に影響を及ぼします。GLP-1薬はこれらの経路を調節して、渇望を抑え、依存性物質がますます欲しくなる効果を減らしていると思われます」とか「食事による満腹感に関わるメカニズムが、アルコールにも関係しているのかもしれません」の意見がある。つまり、GLP-1薬は、人が満足感を得るのに必要な食べ物やアルコールの量を減らす可能性があるということだ。この理論によれば、そうした効果は、アルコールであろうと薬物であろうとニコチンであろうと、物質の種類に関係なく起こることになる。
これまでのところ、GLP-1薬を物質使用障害に使う動物実験の結果は非常に有望であり、人間を対象とした初期データも肯定的だが、これがアルコール使用障害に対する安全で効果的な治療法だと自信を持って断言できるような、ランダム化比較試験はまだ存在しない。
元論文のタイトルは、「実集団におけるセマグルチドとアルコール使用障害の発症および再発との関連性(Associations of semaglutide with incidence and recurrence of alcohol use disorder in real-world population)」です(論文をみる)。
意外な展開ですが、タバコやアルコール依存は非常に大きな問題なので、このような研究が治療に結びつくことを願います。
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