解熱鎮痛薬(NSAIDs)は心筋梗塞患者の死亡と心筋梗塞再発のリスクを増加させる

NSAIDs May Increase Cardio Risk in MI Patients

以下は、記事の抜粋です。


5月9日にCirculation誌のオンライン版に掲載された論文によると、以前に心筋梗塞を経験した患者では、短期の非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の投与によって心筋梗塞の再発や死亡のリスクが増加するという。

コペンハーゲン大学病院のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らのグループは、デンマークで1997年から2006年の間に、最初の心筋梗塞発作によって入院した30歳以上の患者83,675例でのNSAIDの使用を調べた。この中、NSAIDを投与された患者は42.3%だった。これらの患者についてNSAID治療期間と死亡および心筋梗塞再発のリスクを解析した。

解析の結果NSAID投与は、死亡と心筋梗塞再発のリスクを治療開始時期で45%、治療中(90日後)で55%増加させた。個々のNSAIDについては、ジクロフェナクのリスクが最も高く、治療1日目から7日目までのリスクを3.26倍に増加させた。


元論文のタイトルは、”Duration of Treatment With Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs and Impact on Risk of Death and Recurrent Myocardial Infarction in Patients With Prior Myocardial Infarction”です(論文をみる)。

本研究の対象になったNSAIDsは、多い順にイブプロフェン(23%)、ジクロフェナク(ボルタレン®、13.4%)、セレコキシブ(セレコックス®、4.8%)、ロフェコキシブ(4.7%)、ナプロキセン(2.2%)、その他のNSAIDs(12.8%)です。この中でセレコキシブとロフェコキシブはCOX-2選択的阻害薬で、ロフェコキシブとナプロキセンは日本未承認です。

ロフェコキシブは米国メルク社の製品で、1999年に発売され、全世界での売り上げが年間3,000億円に到達していましたが、2004年9月30日、心血管リスクを理由に突然市場から撤退した薬物です(論文をみる)。

以前、関連記事に書いたように、血小板にはCOX-1のみが発現し、血管内皮にはCOX-1とCOX-2の両方が発現しています。COX-2阻害薬の投与により内皮のPGI2産出が減少するため、相対的TXA2増加となり、血圧上昇、動脈硬化促進、血栓形成促進などが生じることや、心血管で誘導されるCOX-2が産生するPGには心血管保護作用があることなどが心血管系イベントの原因だと考えられています。

これらのことから、COX-2選択的阻害薬のセレコキシブやロフェコキシブが心血管イベントを増加させるのは当然かもしれませんが、非選択的COX阻害薬で日本でも良く使われているジクロフェナク(ボルタレン®)の方が、これらのCOX-2選択的阻害薬よりもリスクが高いのには驚きました。

ランダム化二重盲検臨床試験の結果ではありませんが、他の論文でも同様の報告が出ているようですので、心筋梗塞経験者に対するNSAIDsの使用は、避けた方が安全だと思われます。

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コメント

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    やまんばさんていうから
    昔の渋谷のヤマンバさんだと思いましたが
    正真正銘の科学を担う先生なのですね
    素晴らしい知識だと思います。
    12年間の闘病で科学的な薬を服用せず
    断食や小食、現在は埋没や幹細胞など
    先生から見れば、おかしな奴ですよね(笑
    しかも、霊的な経験をしてるから余計に
    おかしいと思います(爆
    治す為にあらゆる経験と行動力で
    頑張ってますが、私の病気はアホ見たく
    現代医学では世界的にも治療が確立してない
    分野なのです。上顎骨髄炎治療で、
    2種混合の抗生剤を3ヶ月投与、高気圧酸素
    療法でバイオフィルムを破壊し、骨髄炎を
    ある程度治せる方法があるそうですが
    私の膠原病は、そもそも抗生剤を長期使用して
    発病したので、免疫のバランスが崩れて
    更に酷い症状になるのが怖いのです
    現在、埼玉医科大学病院では外来で
    保健適応外で誰にでも難治性の傷へ
    幹細胞治療を含めて根治させる療法を
    提供しておりますが、上顎という歯科領域では
    残念ながら経験が無い為断念されました。
    私の病状で、骨髄炎を(上顎)治す良い方法は
    専門家から見て、ありますでしょうか?
    宜しくお願しますM(__)M

  2. magu より:

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    はじめまして
    お聞きしたい件が御座います、NSAIDsとアセトアミノフェンの違いですがNSAIDSはCOX1・2に作用しますが、APAPは大脳中枢と聞いています。
    両剤の違いを考えると心筋に与える影響は違うでしょうか?

  3. magu より:

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    お忙しいなか、質問しても宜しいでしょうか?
    APAP(アセトアミノフェン)は大脳中枢に作用すると言われていますが、今回の論文内容のNSAIDsちは別と考えて宜しいでしょうか?

  4. tak より:

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    >maguさん
    おっしゃるようにアセトアミノフェンは中枢に多く発現するCOX3に対する親和性が強いと言われています。おそらく、影響は違うと思いますが、この論文では使用されていないので、確かなことは言えません。

  5. magu より:

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    >takさん
    ありがとうございました。早々のお返事感謝いたします。
    今年の1月末に鎮痛領域において、海外並みの用法容量(一回1gを4回まで承認され)が変わりNSAIDsとの使い分けを処方医はキチンとするのか?が疑問でしたので。
    本当にありがとうございました。

  6. magu より:

    SECRET: 0
    PASS:
    >takさん
    失礼いたしました
    TAKさんが御高名とは知らず
    ハッと冷や汗が出ました。
    御無礼をどうぞ忘れてください。

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